輪島のカフェから、毎月豆の注文をもらう。
東京からおくる場合もあるけど、なるべく車で配達しにいく。
地震の前は、四季折々の海を左手に見ながらいった。今は
里山の道から迂回していく。黒島、三井あたりは、被害が甚大だったので、
正月に全壊したままの家が道路の脇に、そのまんま残っている。
総理大臣が年内に変わりそうだが、中身も一新していただき、不当にネコババしていたお金
などを、「瓦礫の撤去費用にしてください」と、新聞紙にくるんで寄付する議員がひとりでもいないものだろうか、と思う。
元輪島駅前の「おきな」という喫茶店でモーニング。昨年まで、老夫婦がサイフォン珈琲を
ていねいに淹れる姿を見るのが楽しみで通った老舗。正月の地震を機に老夫婦は引退され、若夫婦に
バトンタッチされた。輪島は、漆の木地をつくる「木地師匠」や、漆を塗る「塗師」などの職人の街で、
朝は喫茶店の珈琲から始まり、仕事が終わると、なじみの居酒屋で一献、という「規則正しい流れ」を
もった人が多い街だ。今回の地震で仕事場やいきつけのお店が多く罹災したけど、すこしづつ新しい街に
生まれかわろうとしている。
輪島マリンランドという夏はキス釣りでにぎわう海際エリアにある「ラポールデュパン」
というパン屋で買い物。二階ではパンと珈琲が飲める。さっきモーニングを食べたので、お土産のパンを買う。
門前(總持寺の門前)に「ケンちゃんパン」というのがあった。地震でお店が全壊し、
廃業をきめた。「ラポールデュパン」は、けんちゃんの兄ちゃん夫妻が営むパン屋。「ケンちゃんの兄ちゃん夫妻のパン屋」だ。
レジの横に、チラシがあって、「おにぎりのお店 新規オープン」とあった。朝市の時に駐車場になる場所の入口にある
お菓子屋さんを間借りしてやっている。お腹はいっぱいだけど、「わかめ」と「まぜごはん」のおにぎりを買い、
お腹は満腹だけど、「応援応援」と読経するように唱えながら食べる。
その後、カフェに珈琲豆を届け、「酒ブティックおくだ」で、お店の酒を調達。罹災して、泥をかぶったラベル
の酒、「能登の地酒を消すな」みたいなラベルをつけた応援地酒。途中から他所の酒蔵でつくった地酒などが並んである。
「これも」「これも」で、レジの支払いが4万くらいになったけど、「なあんも なあんも」だ。
取引先のアトリエや、お店があった焼け跡に手をあわせて、和倉温泉の「総湯」に入り、自分なりに
「これからの能登」を瞑想。和倉温泉界隈も、温泉宿が閉まったままで、夜はゴーストタウンだ。
まだまだ道遠しの感はあるけど、一歩一歩前に歩き始めた手ごたえを確認した一日。感謝。
なにもかも 焼けた朝市 虫すだく