「猫の領分」・・・子猫が産まれた!

南木佳士(なぎけいし)さんのエッセイ集に「猫の領分」というのがある。
正月の大地震で、二階に置いてあった文机の窓際に、「なんども読み直したい本」を並べていた。
文机の上に置いてあった「文房四宝」の硯や墨などは雨漏りでぬれ、「言海」という日本で一番古い
辞書も雨でパリパリになったので処分した。
並べていた本は、少し濡れていたが、なんとか読み直しはできそうだ。

今朝は朝から雨で釣りができず、少し濡れた「猫の領分」を読み直した。「トラ」と言う野良ネコを座敷にあげ、
15年間暮らした思い出を綴ってある。著者は、長野の佐久で、医者と作家(芥川賞受賞)の二刀流。帯の文がいい。

「十五年の天寿をまっとうしたトラは、晩年、寒い朝のテリトリーの見回りは家のなかで済ますようになった。
窓辺で、いかにもなにか考えていそうに見えるそのうしろ姿は、きっといまの自分のように何も考えてはいなかったのだ。
そういうことがありありと実感できる歳になった。」

昨日の昼過ぎ、能登の家の玄関先に、黒い野良の母親が、3匹の子猫を連れて挨拶にきた。5月に生まれた「サツキーズ」。
限界集落の田舎で、大地震に見舞われ、人口のさらなる流出がとまらぬ場所で、3つの命が誕生したのは、
考えようによっては、おめでたいことだ。
筆子さんが、「蚊に食われてかゆいのでムヒを買いにいこう」というので、車で15分ほどの「GENKI」というスーパに
いく。車つきの買い物籠を押しながら、ムヒをそこにいれた。「ムヒだけなら、買い物籠いらないんじゃない」
というぼくの声を無視して、ペットフードのコーナーにいき、「ネコ元気」「煮干し」「牛乳3本」・・を、買い物籠に
入れる。4000円也。我が家のエンゲル係数の分子の7割は、サツキーズたちの食費が占めている(笑)

能登の家の玄関には「四睡図」(しすいず)の大きな絵が飾ってある。南條さんが描いたものだ。
寒山拾得と、トラ、豊干、の3人と一匹が、体を寄せ合って眠る構図の絵だ。
「人間の一番幸せな姿」を表す、ということで、禅林や絵描きたたちが好んで描いた。

夕方、GENKIで買ってきた牛乳を玄関先に置いたら、サツキーズたちが、元気に飲んだ。
まだ乳飲み子なので、その後、母親の乳首を吸いながら眠っている。まさに「四眠図」さながら。
腐敗しきった政治のせいもあり、能登の復興はなかなかすすんでいない感が強い。
こざかしい人間世界よりも、自然の中で自足で、有り体(ありてい)でゆっくり生き暮らしているサツキーズたちの
ほうが、ほんとうは幸せなのかもなんばん。
能登弁で、「ゆっくり生きていきましょう」というのを「ゆるゆると」という。これからは「ゆるゆる」がいい。感謝。

ひぐらしの 子守歌かな ゆるゆると