昨日の朝日新聞の一面に、能登の珠洲の海岸に咲く「波の花」(冬の風の強い日に、波打ち際にふわっと綿菓子みたいなんが舞う現象)の
写真が載っていた。日本海の波にもまれることによって、植物性プランクトンの粘液が、綿菓子みたいになる。
そのプランクトンたちが、悠久の時間をかけ堆積し、珪藻土ができる。
ぼくはその珪藻土でつくった七輪の上に、手回し焙煎機をのせて、炭火焙煎をしている。
どんよりとした雲が手で届きそうな冬に、ゴーゴーと寒風の鳴る奥能登で見る花は、可憐というより、
この土地の人を寄せ付けない厳しさみたいなものを感じる。そんな能登の厳しい自然を、女の情念みたいなものと重ねて宮本輝が
「幻の光」を書いた。「さすが芥川賞作家だ」と感じた一冊。
昨日は6時の閉店間際に、女性が息を切らしながらお店に入ってこられた。
「還元くんを予約した◎◎です」とのこと。明日(つまり今日)の午前中に来店と連絡が
あったので、紙袋に入れて用意してあったので、還元くんでつくった「水素茶」を一杯コップ
に入れて、飲んでいただきながら談論風発。
「一日もはやくと思って・・・」と、まだ息があがったまま挨拶。いらちな大阪のおばちゃんみたいやな、
と思っていたら、少し能登のなまりで「私の実家は珠洲で、今回の地震で全壊して、かえるとこがないので、
しばらく東京で、整体の教室に通ったりしながら、行く末のことを模索している時、天真庵のHPに
出会い、そば打ちと珈琲の焙煎、というこれから私がやりたいことをやっていて、しかも能登とかかわの深い
ことを知り、矢も楯もたまらず、きました」とのこと。
還元くんの使用方法を説明していたら「ふむふむ」とうなずくだけで、傍らに置いてある珠洲の珪藻土焙煎機UFOをさわりながら、
「これもっともっと宣伝したら、世界中で売れるんじゃないですか?」などと質問した後、「そば打ちの時は、エプロンとタオルと何が
必要ですか?」などと明後日の未来に質問が飛んでいく。
「5分でミュージックライン」の中に、「還元くん、そば打ち、焙煎」が、松花堂弁当みたいに詰め込まれる感じ(笑)
コロナのはじまりのころ、「おとうさんが珠洲の人」という男子がそば打ちにきていた。彼も一日目に
「次は、かえしの作り方を教えてください」というので「10年はやい」と答えたことを思い出した。
奥能登の人は、厳しい自然の中で、縄文人みたいにていねいに暮らしているけど、せっかちという背反する性格を併せ持つ人たちかもなんばん。
「幻の花」の中に、大阪から電車にのって、能登の板前さんの後妻にいくシーンがある。いくかいくまいか、複雑な主人公の
気持ちを後押しするような「大阪のおばちゃん」がでてくる。昨日のブログではないけど、「大阪のおばっちゃん・電車にて編」
がおもろい。
大阪のおばちゃん「これからが女ざかりや。・・・がんばりや」おばちゃんは、こわい顔でそう言いはった。
「力いっぱい股(また)で挟んだったら、男なんていちころや。相手の子供を味方にするのんが、こつやでェ、
ほんまやでェ、ほんまにそないするんやでェ」・・・・・(略)
列車が出ていくとき、赤ん坊を乱暴に背中にくくりつけ、二人の子供を右と左の手で引いた漢さん(大阪のおばちゃん)
が、じっとホームに立ちつくしたまま金歯を光らせて笑いはった。それは、知り逢うて十年もたつ漢さんが、わたし
に見せた初めての笑顔でした。
*努力・・・女の又に力、がすんなりわかる気がする文章!