白玉の歯にしみとほる秋の夜の・・

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり   牧水

酒が美味い季節になってきた。昨日は少し寒かったので、珈琲を炭火で焙煎し、
残った炭を、囲炉裏にいれて、夜はそれで熱燗を飲んだ。
囲炉裏は、大きな木の根元を切り、そこに銅を張り込み、そこの灰をいれ炭火をおこし、五徳(ごとく)を据え、鉄瓶にて湯を沸かす。
三重の久保さんのアトリエにあったものをいただいて、能登にもってきた。

もうひとつ、八広のお屋敷から頂戴した長火鉢(ながひばち)が玄関においてある。その長火鉢には、
五徳のかわりに、燗銅壺(かんどうこ)がおさまっている。きっと持ち主が、左党、しかも熱燗党だった
に違いない。火鉢の抽斗(ひきだし)に、愛用のぐい呑みがひとつ入っていた。「古」はつかないけど、
愛用され、酒が育てたいい感じの小ぶりの「唐津」だ。一楽二萩三唐津(いちらくにはぎさんからつ)・・・昔から茶人や左党が好む焼き物の順。

昨日は、その五徳と燗銅壺を交換した。つまり、居間に置いてある囲炉裏に、燗銅壺が入った。
さっそく、そこで燗酒をつける。蓋がついた釜の部分に湯をいれ、久保さんの黄瀬戸(きぜと)の二合徳利に、
亀泉(かめいずみ)をいれ、釜の横についている小さな五徳に網をおき、ホタルイカの干物を焼きながら、燗酒を
飲む。ぼくは、久保さんの「織部六角」のぐい呑みで飲み、横に置いた脇息(きょうそく)に、
唐津のぐい呑みをおき、鬼籍に入られた長火鉢の御主人と乾杯。語り尽くせど飲み飽きない、ほどあの世の人と談論風発。
いつもは、錫のチロリを鉄瓶にいれて飲んでいたけど、徳利をお湯につけると、また酒の風情が一段あがる。
これから秋が深まるにつけ、ますます燗あがりしそうだ。

「亀泉」は、能登の総持寺の門前にある中野酒蔵の名酒。
社長兼と杜氏は、自称「後期高齢のおばあちゃん」。
門前の小僧(お嬢さん)習わぬ経を読む.よろしく、若いころ道元さんや仏教に興味があり、
東京の大学で仏教を学んだひとだ。毎月、酒蔵までいき酒を買い、おばあちゃんと、禅とか仏教の
話をするのが楽しみになった。

道元さんの「典座教訓(てんぞきょうくん)」は、何度も読んだばってん、
そろそろ酒ばかり飲まず、囲炉裏端に「正法眼蔵」(しょうぼうげんぞう)か「正法眼蔵随聞記」を置いて、
酒を飲もうか、などと考えている。積読(つんどく)で終わるだろうけど・・・・
でも道元さんは「日常生活すべてが修行である」と説かれた。洗面、厠(かわや)、典座(りょうり人)の心構え、
酒の飲み方・・・みな修行だ(笑)  どげんこげんいったっちゃくさ、道元さんはえらか人ばい!

明日から、新潟の骨董屋を徘徊する予定だ。実はお店で使っている骨董品の2割は、新潟の骨董屋からきたもの。
四半世紀前のことだから、もう廃業したお店も多いと思うけど、良寛さんに会いにいくようなつもりで、いってみる。

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