独居老人スタイル

2013に上梓された都築 響一 著の単行本。
ゴッホの自画像が表紙でジャケ買いのように、板橋の古本屋で買って、
駅前のしょぼい喫茶店でむさぶり読んだ。

たまたま、その本に「プッチャリン」さんが紹介されていた。
ときどき、浅草界隈の劇場でチャップリンの恰好をして、道化師をやっておられる。
縁あって、一度雨の日、上原英里さんが天真庵でシャンソンのライブをやる時、チャップリンの恰好で
お客さんを迎えてくれた。小ぬか雨降るうらぶれた十間橋通りが、まるでパリのシャンゼリゼ通りみたいに、
ぱーっと明るくなった。

幇間芸(「ほうかんげい)の「たまちゃん」を忍ぶ会も2018年、縁あって天真庵で行われた。浅草芸人たちが、あまた
集まり、在りし日のたまちゃんを忍んだ。壁一面に、浅草芸者時代から、幇間時代までの「たまちゃん」の写真を
飾り、「どうぞご自由にお持ちください」ということで、芸人さんに持って帰ってもろうた。
その芸人さんたちの中にも、生前仲良くしていた「プッチャリンさん」が、素顔のまま写真を見ながら
目頭を熱くしておられる姿が印象的だった。ひとたび化粧をしてチャップリンの姿になると、目の前のお客さんに
全身全霊をかたむけ、笑い、という芸人になりきる仕事とは裏腹に、素は、笑いに飢えている凡夫たち以上に、乾いているし、
寂しさを内包しておられる。太宰の「人間失格」の主人公みたいなものか?

都築さんの本には、プッチャリンさんの母親の手紙が紹介されている。なかなか目がでず、70歳近くなっても独身の彼を心配して、
「日の里(福岡の宗像にある地名 彼は6丁目 うちの実家は4丁目にあった)に、帰ってきなさい」と綴られていた。

今朝の朝日新聞の「フロントランナー」には、女性クラウンコンビの「ロネとジージ」が紹介されていた。
クラウンとは「道化師」のことで、彼女たちはモンテカルロ国際クラウンフェスティバル銀賞、クラウンズ・インターナショナル
最優秀賞を受賞した。でも日本ではほとんど無名。白塗りの舞踏家たちと同じように、日本での「クラウン」そのものの
価値観が違うようだ。

人の評価も、小さいころから偏差値という数値化されたものに右往左往し、音楽や芸術も、有名かどうか?
とか、料理の味さへネットで数値化されたものや、ミシラヌ国の評価を頼りに、お店をきめたり・・・
「わたし」がどこにいるのかもわからない不思議な世界を、みんなで漂流しているような時代やね。
ちゃんと生きようなんてさらさら思ったりしないばってん、「らしく」生きていきたいと思う今日このごろ。感謝。

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