能登は桃太郎がいる?

先日は珠洲の丸和工業にいった後、輪島の朝市(朝市が終わった後は、駐車場が無料になる。感無量。)
の駐車場に車をとめて、あたりを徘徊散歩した。
輪島塗の職人も街で、こちらに半分近く暮らすようになって、職人の知人も増えた。
もともと漆は好きで、東京のお店では、能登牛すじカレーそばととりそばには、木曾の漆の椀を
使っていたり、花巻そばは、能登の合六椀、倍セット(そばの量が二倍)の人には、輪島の名工の
漆の椀でそばを供している。もうすこし、ゆっくり生活するようになれば、「そばの茶会」をしようなんて
考えていて、銀座の骨董屋で見つけた漆のお重のセットと、それを包む藍の風呂敷もすでに用意している。

輪島の街は朝市で有名で、朝から観光バスなどがきてにぎわっている。今の観光地は、京都、浅草、スカイツリー・・・
少し人が多すぎる。輪島の午後は少しうらぶれた感があるけど、朝市が終わった後のほうが風情がある。そして陽が暮れた後の
居酒屋がいい。能登の地酒に「白菊」というのがある。住吉神社の近くの老舗酒蔵「白藤酒造」の酒。冬にでる「にごり酒
は秀逸だ。新そばの会でもやる時は、ここのにごり酒をふるまいたいものだ。

界隈には「柚餅子」を扱うお菓子屋さんも風情よく佇んでいて、左党も甘党も、両刀使いの小生も、歩いているだけで
楽しくなる。輪島の街を徘徊すると、方向音痴には、二度ともどってこれないくらい「ゆべし」の看板がよく目につく。
日当たりがよくて、肥しが調達しやすい「厩」(うまや)の横に柚子の木を植えていたのが、はじまりらしい。
ぼくは、「杉平」というお菓子屋が好きだ。ただし、正直いって、まだそこの柚餅子は食べたことがない(笑)。
お菓子なら京都の阿闍梨餅、チョコレートはガーナ、カレーはチキン、と、勝手きままな流儀?がある。
加えて、ソフトクリームは、バニラ一辺倒。なにを隠そう、ここ杉平のソフトクリームは、能登一、というより全国一、
だと私の舌が勝手にそう評価している。朝7時半から営業しているので、朝市にいくついでに足を延ばしてみるといい。

今日は朝から曇り空。
先週はひさしぶりの凪が続き、毎朝6時の「さざえさん」のモーニングコール(防災用のスピーカーから流れる)よりも早く、
近所のじいちゃんたちが伝馬船にのり沖に釣りにいき、おばあさんたちは、海女さんよろしく、ワカメやサザエを採ったりしている。
昔昔のお話を昔聞いたように「桃太郎のいる景色」のごとくだ。

「おじいさんは山へ柴刈りに おばあさんは川に洗濯に行きました」

どこの地域も、65歳の老人が半数を超える「限界集落」になりつつある。能登はまさに、典型的だ。
でも、朝から「おじいさんは海へ釣りにいき、おばあさんは浅瀬で海藻やサザエなどをとったり、畑仕事をしている」
「悠々自適」とは、貯金や年金で、体を動かさず、家にいって日がな一日テレビやネットやスマホをしていること?
誰が言い出したか知らないけど「老後に2000万が必要」だとかいう呪文にしばられ、いつ終わるとも知らない人生を
味わうこともなく、貯金いっぺんとうの荒唐無稽な老後なんてナンセンスだ。あげくの果てに、面倒も見てくれない親族や、
国に「使わなかったお金」があぶく銭としていくシステムになっている。85歳まで生きたら、その後は「シルバーインカム」
で、毎月20万とか支給したらどうかしらん。それまでに「貯金を使い切る」が条件。
能登の人たちの暮らしを見ていると、みなが背中ごしに、そのようなことをのたまっておられるように思う。感謝。