河出書房新社から「こぽこぽ、珈琲 」という素敵な珈琲にまつわるエッセー本がでている。
井上ひさし、森本哲郎、常盤新平、山口瞳・・・そうそうたる文人たちの極上のエッセー集。
皮切りが、野呂邦暢(のろくにのぶ)。この本を読みながら珈琲を飲むと、大切な「人間味」みたいな味がする?
野呂さんは、長崎生まれで、「草のつるぎ」で芥川賞をとった。論語の会の幹事を永くやってくれた清水さん
の高校の先輩にあたる。さっそく、「草・・」を読み、「海辺の広い庭」を読んだ。
圧巻は「落城記」・・・歴史もんは、時の権力者やそのファンたちが、勝手に捏造したようなものばかりで辟易する。
そんな理由で、大河ドラマや歴史本を読まない人は、ぜひ一度読んでほしい。
昨日、「昔日の客」(関口良雄著)が能登の家にきた。昔、大森にあった古本屋の著者が還暦を迎えた時に
、お店に来られる文人たちの素顔をエッセーにしたものだ。その名著を。今年の8月、島田潤一郎さんが、「夏葉社」という出版社を
おこし、復元した本。
しんがりが「昔日の客」だ。 野呂さんのことを書いてあった。
長崎県の諫早(いさはや)高校を卒業し、野呂さんは上京し、くだんの古本屋の近くに家を借り、上野
のガソリンスタンドに勤めながら、古本を買いにきた模様を、ほのぼのと綴っている。
家の事情で、長崎にもどったが、芥川賞をもらい、上京した時、また古本屋を訪ね、「海辺の広い庭」を
土産にした話で終わる。ますます野呂さんのことが好きになった。
その本の見返しには、達筆な墨書きで次のように書いてあった。
「昔日の客より感謝をもって」野呂邦暢
中秋の名月を愛でながら酒を飲もう、と二階の部屋の窓際に、この本と徳利をもっていった。
肝心の月のほうは雲に隠れていたが、本の内容が、いずまいを糺すようなものばかりで、ぼくの
薄汚れちまったこころが、晴れ晴れとして、虫たちのすだきと、酒が五臓六腑にじーんと染みた。
愛は愛を呼び、感謝は感謝を呼ぶ!