昨年の秋から「能登牛すじそば」といっしょに「花巻」(はなまき)を新しいメニューにした。
江戸の粋?(あまり見たことがない)なのか、江戸前(東京湾)がきれいで、魚やのりがいっぱい
とれた時代、温かいそばに、切り海苔をぱらっとちらし、丼に蓋をして供するそばを「花巻」
といった。蓋をとると、礒の香りがして、花鳥風月を感じる、そういう風情のあるそば・・
「花巻」という名前の由縁は、諸説あるようだが、「夜鷹」(よたか)と同じように、そばや
が花街にて、繁盛してきた歴史の産物ではなかろうか、と思う。
天真庵の花巻は、能登の「岩のり」を使っている。冬の能登は海があれ、漁にでれない日が多い。
そんな時、女たちが岩についたのりを、命がけで採集してきた歴史がある。
昨日、近所のおばあちゃんが、「暖かいのでまだタコがいるよ」と教えてくれた。
さっそく、準備をして車庫の階段のところに、傘みたいに立てかけている「タコ釣り竿」
をもって、海へテクテク歩いていく。徒歩3分のところに、海はあるばってん、タコ釣りは、
熊がでそうな藪を超え、隣の港町まで歩く。徘徊してもどる家がわからんようになった時のため、
スボンには、携帯と、お店はないばってん、いざ金1000円くらいが入ったがま口、肩にかけたウナバック
には、マキリ包丁(能登の万能包丁)、蛸を入れるビニール袋、予備のタコヤン(イカの形をした疑似餌)、外道(タコ以外のフグとか海うしなどが釣れた場合の、はさみ(つまむもん))が入っている。
海に着いたら、おばあちゃんが岩場にべたっと尻を落とし、相撲取りがまた割りするような恰好で
ぎざぎざの鎌で、なんかをこそぎ取ってるおばあちゃんがいた。「こんにちわ。なんしようと?」と尋ねたら、
「娘がひさしぶりに帰ってきたんんで、岩ノリをとっとーと(方言指導が必要かも・・・能登のばあちゃんが九州弁をしゃべるはずはなか)」
とのこと。「それは、娘さんよろこんどろうね」と言うと、「危ないから、やめとき、いわれた」(笑)とのこと。
「あんた、こないだテレビにでてた人やね」という。もう3年も前に地元の金沢テレビにでたことがあるばってん、地元
では、「東京から変な人が移住してきた」ということになっていて、UNA帽子をかぶり、太公望よろしくいつも釣り竿をかかえて
徘徊している変人を見つけたら、まるで👽を見たげな顔して、そげな風にいわれることが多い。
しばらくタコヤンを泳がしていたら、冬で冬眠?から覚めたみたいな酩酊タコが釣れた。おばあちゃんが「やったね」
と喜んでくれた。そして「うちでは、タコが釣れたら、さっと洗って(これがたいへん)、霜降りにして、
だいこん、醤油、酒、砂糖、酢をいれ、60度から70度で20分ほど煮込む。すると、その後、それを切って
醤油で刺身のようにして食べたり、そのまままた熱を通して、柔らか煮にしたりするよ」
と教えてくれた。京都のおでんやの親父に「タコを大根でたたくと、柔らかくなる」という話を聞いたことがあるが、
さすがタコフェスタの能登・・・さっそくおばあちゃんの伝統的なレシピでタコをゆでた。
夕方、「ますほの湯」という町営の銭湯にいって(65歳から250円で温泉に入れるとばい)、汗を流し、
夜はタコで一献。「あのおばあちゃん、若いころはべっぴんさんだったろうな~」なんていうこと想像しながら、
竹葉の燗酒を3合飲んだ。「おでん 熱燗 昔の女(男)」・・・いいもんだ。感謝。