芥川賞作家で、「千の風にのって」(♪私のお墓の前で・・・)の新井満さんが旅立たれた。
本箱に、「独楽吟」という彼が編集した風流な本が一冊ある。
福井の幕末の歌人・(たちばなのあけみ)の連作「独楽吟」で、この52首を再編集し、末法みたいな今を生きる日本人に新井満が贈る
風流なメッセージ。どれも「楽しみは・・・」から始まる。日常のなにげないものに、こころをそっとよせると、とても幸せでほっとするような気付き、そんなものがいっぱい。おすすめの一冊。
近くの古いマンションで、朝から近所の独居老人さんたちに、朝ごはんを食べさせ、薬をのませ、散歩にいき、
毎日自宅で「モーニングサービス」を無料で提供し、ときには、入院する年寄りに付き添いをしたり、通院するのに
付き添いをしたりするおばあちゃんがいる。「今年が最後ね」といって、夏に実家福井のお兄さんがつくる「越のルビー」たる高級なトマトを
くれたり、週に一度、得意料理をそれぞれつくる会で、つくりすぎたかき揚げや焼きそばをわざわざもってきてくれたり・・・
先月、その実家のお兄様が末期がんで、「最後は自宅で」という本人の希望で、「しばらく実家で兄さんの世話をしてきます」といって
帰郷した。そのおばあちゃんも、「独楽吟」が大好きだといっていた。福井の人にとっては、独楽吟は、こころのふるさと。
花鳥風月を愛でる人というのは、いくつになっても、若々しく素敵に満ちている。
先日は近くで美容院をやっているおばあちゃんが蕎麦を手繰りにこられた。昭和8年生まれの88歳。
能登の七尾出身ということで、合鹿碗(ごうろくわん)に、能登の岩ノリをたっぷりのせた「花巻」を
えらくなつかしそうに食べていかれた。
娘ふたりを育てあげ、今はひとりで生活をし、常連さんだけ、予約があれば髪の毛をきったり、染めたり、
パーマをかけたりしているとか・・・・まったく矍鑠としていて、頭が下がる。
「自分を必要としている人がいる」という意識をもった人も、みな元気だ。
ヨッシーたちのコンサートを小竹向原にいった帰り、突然池袋で降りて、「千登利(ちどり)」に立ち寄った。
このお店の女将は「池袋のおかあさん」というか、怪物のように若い。
カウンターに座って、名物の「とうふ」こと、味の浸み込んだ真っ黒の肉豆腐をつまみに、両関の燗酒を
飲む。昔はよくゴルフスクールの先生や、ゴルフ仲間といったお店。みんな千の風にのって、あの世に
引っ越しをしていまったけど、女将さんは、若いスタッフといっしょに、溌剌と動き回っている。
時間は5時過ぎだというのに、カウンターはほぼ満席。女将さんはときどき、お洒落をしてわざわざ押上天真庵に
蕎麦を手繰りにこられる。失礼なので年をきいたことはないばってん、そろそろ米寿、いや超えた?
そのくらいだと思う。「もう少し鍛えよう」と、5年ほど前に西武デパートのカルチャースクールの「菊池体操」を
申し込んだけど、「年齢制限」にひっかかった、と笑い飛ばしていた。
このお店で飲むと、昔妖精だった怪物の精?をもろうて元気いっぱいになる。感謝。
たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の
咲ける見る時 橘曙覧
明日から17日(金)まで能登休み たのしみは・・を、みんなそれぞれが見つける時代