作務衣では寒い!

桜も咲き、ポカポカ陽気な毎日やったけど、昨日は冬がもどって
きたような天気だった。
夕方、空にした石油ストーブーに、また石油を入れ、火をいれて
暖をとっていたら、お洒落なチャリンコにのった青年らしき人が
蕎麦を手繰りにきた。よくよく見ると「王子」だ。

押上の細い男根のようなスカイツリーの麓に「隕石直売所」なるものをつくり、地元の人や
観光客に「あやし~い」なんてこといわれながら、着実に実績を重ね、一昨年に、銀座4丁目に移転し、コロナ禍の
中でもちゃんと業績をアップさせている不思議な宇宙人みたいな人だ。人よんで「星の王子」。
実家が太陽系の・・・ではなく、福岡県宗像市・・・の下の街のところまで一緒で、彼のところが
一丁目、うちが4丁目という奇縁だ。
ときどき「宇宙農法でつくったイチゴ」とかいって、わざわざ届けてくれたり、見た目やテレビにでる時とは
違って、フレンドリーだ。

昨日は「免許取り消しになったけん、銀座から自転車できたっちゃん」という。土産は
大そうな箱に入った「朝鮮人参」。「?」な顔していると、「これいただきもんばってん、
うちでは不要なんで、誰にあげようか相談したら、『天真庵でしょう』とみながいったので・・」
とのこと、能登に移住した三輪福さんちに、梅ができ、最初の年に処理にこまって50kくらい
おくられてきて、「梅仕事」が始まったように、きっかけはどうであれ、「困った時は天真庵」
から、何かが始まることが、ままある。
さっそく、大きな蓋つきの野草酒などをつくるガラスの瓶に入れ、35度の焼酎をなみなみ入れて
「朝鮮人参酒」を仕込んだ。

ぼくらのふるさと宗像は、宗像大社の神域で、昔から大陸との交流が盛んな土地。みな小さいころから
「神湊」(こうのみなと 神の湊ばい)や鐘崎港(九州一の魚があがる港)で釣りの洗礼を受ける。
海女(あま)の発症の地でもあり、北前船で人や文化が伝わり、能登では今でも現役の海女さんが、あまたおられる。
そんなわけで王子もぼくも無類の釣りバカである。

20年近く前に韓国にいった時に買った「朝鮮人参酒」がまだ家にのこっている。空になったら、またつぎ酒のように
焼酎を継ぎ足せば、ちゃんと黄金色した酒ができる。空港などの土産店で買ってくると、ラベルに小さく「メイドインジャパン」
なんて書いてあるものが多い。地元のホンモノは、畑が何年も使えないくらい、土の栄養素を吸収する。
久しぶりに、その滋養強壮のかたまりのような「朝鮮人参酒」を飲みながら、開高健の本を読んだ。

こんなくだりが・・

総じて言うて人生は短い。だから「ランプの消えぬ間に生を楽しめよ」というフレーズに、
すかさずたくさんの声が「私ならランプが消えてからにしたいわ」・・・

サントリーの広告部で数々の名文句を生み、芥川賞をとり、世界中で釣りを楽しんだ作家らしき一文。
「釣師は、おしなべて短気で助平」という諺も、彼の文章にはあまたでてくる。
なんとなく、ストンの丹田の下のほうに、すんなり落ちる名言でもある。感謝。