最近はお寺や座禅の道場よりも「車の中で悟る」ことのほうが多いらしい。
坐禅をしていて、表から風が吹いてきた瞬間に悟る、とか、後ろに壁があると思って、
もたれようとしたら、なくて体が床につこうとした瞬間に悟る・・・とか
そんなことが言われたり、書かれたりしたけど、事故にあう瞬間などに「あっ」
と悟ったりすることがままある、らしい。凡夫でのほほんと生きてきたので、
そんな悟りの瞬間を、今だに体感したことはないけれども・・
能登を出発する日は朝から雪が降っていた。畑も雪一色だったけど、辛味大根を収穫。
葉っぱは手でちぎって、畑の畝においた。そうすれば、来年の土になる。畑も、雪と混ぜるように、
鍬をいれた。そうすることによって、新しい空気が入り、細菌や養分がまた活力を発揮するようになる。
今日からの蕎麦は、とびきり美味い辛味大根がつく。(ただし、ざるか梅おろしそば)
いつもと違う海沿いの道を走りながら、走った。山道は積雪が多いのと、除雪ができてない感じだった。
冬の日本海は、鉛色の雲が低い位置に漂い、波はモノクロのまるで八岐大蛇(ヤマタノオロチ)のように
ゴーゴーと音をたてて迫ってくる。能登暮らしも3年。冬も三度目の正直。
ラジオでは、立ち往生の情報や、妙高高原あたりが通行止め、だという。「あわててもしかたないな」と
悟り、和倉温泉の「総湯」という、加賀屋なんかにもお湯を提供する共同風呂にいって、500円で
のんびり朝ぶろ。さすがにお客さんも少なく、露天風呂でショパンやラフマニノフなどのピアノ(このお風呂は年中、クラシックのピアノが流れる)
を聴きながら、この世とあの世の区別がわかなくなるくらい、ゆっくり瞑想。
冬にここの温泉に入ったら、しばらく車の中で暖房しなくても、ホカホカ弁当になったようにホカホカだ。
通行止めの手前のパーキングで、ラーメンが食べたくなった。東京では、年に一度か二度くらいしかラーメンは
食べないけど、雪景色を見ると、パブロフの犬みたいに食べたくなる。
ちょうど、食堂のテレビで通行止めが解除になるニュースが流れ、アイスバーンの妙高高原あたりを走った。
もちろん、車はスタッドレスタイヤ、車の中には、スコップとチェーンも積んでいる。食料も、向こうの冷蔵庫に
あるあまりものをクーラーに積んでいるし、畑と海釣り兼用の長靴を履いている。車の中には、珈琲と煎茶が
いつでも飲める道具が小さな茶箱に積んであるし、七輪と炭まで積んでいる。辛味大根も蕎麦粉も。
トラックはチェーンか、全部のタイヤがスタッドレス、というのが通行止め区間の条件だ。普通車は
冬用タイヤ(スタッドレス)でOK牧場、という条件やった。でもトラックはほとんどが、チェーンをしてなく、
スタッドレスで走っていた感じ。お金はかかるけど、あの大きなタイヤにチェーンをするのは大変な労力だ。
アイスバーンの下りをゆっくり走っていた時、ラジオから、ゆずの「夏色」が流れてきた。
♪この長い長い道を 君を自転車のうしろにのせて ブレーキをいっぱい握りしめて ゆっくりゆっくり下っていく・・
「これだ」と悟った(笑)
還暦過ぎたら、モテキも遠い昔の夢物語みたいなもんやし、ゆっくりゆっくり下っていくのがよろし・・
世界の経済も、これからしばらくの時代は、ゆっくりゆっくり斜陽みたいに下っていく。
ゆっくりみんなで下っていく時代に、「新しい政策でV字回復」とか「コロナ禍でも貯金を殖やす方法」とか、
なんかベクトルが明後日の方向むいているような気がする。力を抜いて、みんなでゆっくりゆっくり下っていくのがけっこう。
今日はあまり集まってないけど、大石さんのライブがある。来年はライブなどがやれるかどうかわからないけど、
「今ここ」に感謝しながら、自分でできること、したいことをやっていこうと思っている。感謝。
19日(土) 「大石 学 ソロ LIVE」
演奏:大石 学(ピアノ)
18時開場 18時半開演 ¥5,000(お酒・肴・蕎麦・珈琲 付き)