と、検索すると1980年に放映された映画がでてくる。
大森一樹監督。
先日の「イノダアキオ」さんの、三条堺町のイノダは、その当時の「京都の匂い」
がする。「コーヒーブルース」を聴くと、空気感がその当時の京都になるようだ。
水曜日に板橋の歯医者にいき、その近くの古本屋をのぞいたら、「イノダアキオ
さんのコーヒーがおいしい理由」(アノニマ・スタジオ)という本があって、800円でゲット。
その本には、生前の高倉健さん、筑紫哲也さんの話がのっていた。おふたりとも同郷の先輩。
新幹線がくる前の博多や北九州の街にも、珈琲の名店が数々あって、そんな珈琲文化で育ったふたりが、
イノダのカウンターに座って、イノダアキオさんの珈琲を飲んでいたのが、なんとなくうれしい。
話がもどって、大森一樹監督は、府立医大の学生のころから、映画をつくっておられた。
ぼくが通った立命館大学の法学部は、その当時御所の東側にあって、河原町通りを渡ったところに
府立医大があった。そこから500mくらい「下る」と、ジャズ喫茶の聖地「シャンクレール」
があり、そこの「荒神口」を少し下ったところに「安兵衛」というおでんやがあった。
そこの常連(お互いに学生やのに、よく飲んだ)だったので、よく「名誉冠」のぬる燗を
並べ、四方山話をした。ある日、飲んでいたら、突然停電になった。頑固親父の店主が、カウンターに
ろうそくを立ててくれた。ほかの客はいなくなり、ふたりで、「こんどの映画」の話になった。
その「こんどの映画」がヒポクラテスたち。
同じ店で、おでんつまみながら、このひとは、こんなこと思いながら飲んでいるんや、と感動した。
酔った勢いで「その映画に、ぼくでれへん?」と、いったら、ニヤッと笑って、
「京都で一番おいしい珈琲は、「からふねやの下鴨本店」で、きみがいれる珈琲やと思う。それどこかで使うわ」
といってくれた。そんな酔狂な話があってすぐ、ぼくは骨肉腫になり、その府立医大で手術をし、
大徳寺の病院にしばらくいて、ギブスがとれぬ時に上京し、「日本ソフトバンク」という、その当時
はちっこい会社で、たつきをえる生活が始まった。その年のクリスマス、まだ恋人もいないころ、
荻窪のルミネの中の映画館で「ヒポクラテス」をひとりで観た。
ネタをばらすと、なんなんで、いわへんけど、主役の古尾谷雅人(こないだ自殺された)の口から
「からふねや」というセリフがでてくるシーンがある。酔った勢いで、話たことを、ちゃんと映画に
いれてくれたことに感激して、涙がでてきた。
あれから40年になるので、話のストーリーなど忘れてしまったけど、その当時の「京都の学生の青春」がうまく表現されていた、と思う。
そんな空気をまた吸ってみたくなったら、高田渡さんの「コーヒーブルース」や、加川良さんの「下宿屋」
を聴くみたいに、「ヒポクラテスたち」を観てみようと思う。感謝。