それは、観光客がいっぱい押し寄せ、「京都の豆腐がおいしい」というからではないか?
6年住んでいたけど、「うまい」と思うところにであったことがない。しかも、地下鉄工事
が始まり、水の味が変わってしまってからは、もっとひどくなっている気がする。
東京にきて、というより、墨田に天真庵を結んで、ときどき「豆源郷」の主人が蕎麦を手繰りにきてくれた。
石原?やったか?いつもてくてく歩いていくけど、ここの豆腐は美味い。ちゃんと京都で修行したらしいが、
「守破離」の破離が飛びぬけていて、「センス」を感じる。もちろんただならぬ努力をしている男やと思う。
豆腐もうまいけど、お揚げがまたうまい。それにも理由があって、利益よりも「味」優先なので、使う油
が、一般のソレとは、ベツモノなのだ。
今スーパーなどで売られている「豆腐」というものの中には、一丁に大豆が6粒・・・そんな
ものが堂々と並んでいる。「がんもどき」ではなく「とうふもどき」なのだ。
その大豆も、国産ではなく、遺伝子組み換えの大豆を輸入したものがほとんどだ。
凝固剤も昔は「にがり」が使われていたけど、最近は硫酸カルシウムやグルコノデルタラクトン
が主流。京都の豆腐屋もほとんどが、残念ながら後者のふたつを使っている。
大豆を一晩つけて、ミキサーで粉砕し、土鍋でことこと煮ながら、静かににがりを打つ、
と寄席豆腐ができる。(それをふきんを敷いた容器にいれて、重しをすると、木綿豆腐ができる。
最近は近くのスーパーでも、いい豆乳が売っているので、もしも「にがり」が手に入る人は
冷たい豆乳500CCに液体にがりを10ccいれ、それを鍋で加熱したり、容器に入れてチンしても
「そんじょそこいらの豆腐」よりも、おいしい豆腐が家庭でできる。
子供たちと、いっしょに作っても、楽しいと思う。
にがり、は、そのほか、ごはんを炊く時、カレーや煮物をつくる時、みそ汁なんかに少しミストしても
「いい塩梅」になる。いいあんばいとは、母親の羊水の中と同じ塩加減。
命の源とつながるものだ。まさに「母親の味」の根源的なものだ。
湯豆腐や持薬の酒の一二杯 (久保田万太郎)
そんな風流な気分になれるのは、ちゃんとした国産大豆に「にがり」を打ってつくった豆腐だからこそだ。
ぜひ、この巣ごもり期間に体感してほしいものだ。感謝。「