なんとなく緊急事態宣言が解除され、「もとにもどる」ような雰囲気
がでてきたけど、世の中はある意味、いい方向に変わってしまった、そんな気もする。
昨日の朝、十間橋通りを明治通りのほうに向かって散歩していると、おかまのMくん
の家のドアが開いていたので、「おはよ」と声をかけた。2007年に天真庵ができ、
翌年2008年に、そこに引っ越して、古本屋カフェを準備中。彼が紹介してくれた縁で、
「お花の教室」ができたし、予言したように「梅の本」を貸してくれてから、お弟子さま夫婦が
能登の梅林付きの家に移住し、「梅林ガールズ」が結成され、その流れで、ぼくらも半分能登で
暮らすようになった。
一階のカフェにする予定だった(この建物がこの秋、取り壊される)ところに、何千冊かの本とか
掛け軸なんかが置いてあり、傍らに檜のテーブルと椅子が置いてある。池袋時代にうちにあったものを
受け継いでもらったものだ。冷蔵庫もあげたけど、「オフグリッド」(電気・ガスなどを極力使わない生活)
の先駆者のような生活をされているので、一度もコンセントに差し込んでいない。
古本屋のオヤジよろしく、「茶事」の本と、「一茎有情」という、宇佐美英治(詩人)と志村ふくみ(染色家)の
本を、重ねて倒れそうな本の中から抜き出し、「前からさしあげようと思っていた」といって、くれた。
その本の下に「自休自足」という雑誌があった。表参道に煎茶のお稽古にいく時、近くの青山ブックセンターで
よく買った本。今は「ターンズ」という名前に変わった。
創刊五周年号(2008年)創刊号とその五周年号には、「つばたしゅういち・英子さんの暮らし」が紹介されて
いたのを思い出し、「これちょうだい」といって、ふたりでその本を抜こうとしたら、その本の山が
がけくずれをおこした。
「つばたしゅういち・英子」さんの暮らしは、その後「人生フルーツ」になったし、本も
たくさんでて、田舎暮らしや、老後の暮らしを考えている人たちの「バイブル」になりつつある。
今回のシンコロのおかげで、「家族のありかた」「住みたいところ」「今後の人生」・・・
いろいろなことを考えたと思う。縁があったら「人生フルーツ」の映画の中に、いっぱいヒント
が見え隠れする。その5周年記念の「もう一度、自休自足な人々を訪ねて」という文章を紹介する。
シンコロ明けの今にピンとくるようなメッセージだ。
「私たちは生きています。
だから、今生きている以上
私たちの毎日の暮らしは心地よくなければいけません。
私たちは自然の中で暮らしたいと思います。
忙しすぎる世の中だから
もっとゆっくり暮らしたいと思います。
太陽の光を浴び、土と戯れ、種をまき
育て、収穫して食べる。
森の匂いをかぐ。海の風を感じる。
そんな毎日をおくりたいのです。
そんな生活こそが人間本来の生活だと思うのです。」
本といっしょに、軸をひとつくれ「これ能登の天真庵に飾って」とくれた。
「趙陶斎」という煎茶人あこがれの翁の一行書だ。
ついにこの街で、素敵な古本屋カフェがオープンすることはなかったけど、
欠かせない存在であった。明治通りの「旧邸」というシャアハウスの横に、
道場のようなものができ、琉球畳の部屋に、屏風が飾ってある。その屏風も
Mのコレクション。なかなかいい感じに飾ってある。押上文庫のカウンターの
上の額も、そうだ。感謝。