能登へきたまえ

江戸から明治にかけて、「北前船」が日本海を中心に活躍した。「きたまえ!」
春は、大阪から米や酒、衣服、油、雑貨などを運び、帰路は北海道や東北
からニシンのかす(肥料にしたらしい)や海産物などを運んだ。

能登の家から、門前や珠洲にでかける時、「門前町黒島町」という北前船ゆかりの街
を通る。ここは、北前船の「五大船主」が居を構えたりしたとこで、建物や庭や調度品
などを見ていると、たんなる「貿易で稼いだ富」だけでなく、「文化」が感じられる。

能登の漁師がもっている「まきり」という包丁も、堺あたりの包丁が船上でいろいろな魚を
捌いたりするうちに、「万能包丁」のように進化したものだ。「ふくべ鍛冶」に頼むと2年
くらいかかるけど、一生ものの「まきり」ができあがってくる。

その一角に「泳」(およぐ)という魚のうまい店がある。おまかせ定食(1500円)を所望すると、
能登前の魚のさしみや焼き魚、天ぷらがでてくる。これを食べていると、まるで海の上を「商社」
のごとく駆け回って富を得た「富豪」にもなった気分がする。

きれいな女将さんが「今日はお祭りなので、車をそのままにして見ていってください」とのこと。
毎年8月17日、18日が「黒島天領祭り」がおこなわれる。中心になる「若宮八幡神社」に参拝。
名前を見ても「九州」との縁を感じる。少し高台に続く参道の階段から海が見えた時、海の男たちが
神様に祈る気持ちが伝わってきた。
この地に住むようになってまだまだ日は浅いけど、ずうっと遠き過去に生きていたような不思議な記憶。

哲人の言葉がよみがえる

人間というものは時の上にあるのだ
過去というものがあって 私というものがあるのだ
過去が現存しているということが
またその人の未来を構成しているのだ(西田幾多郎)

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