昨日は朝起きて、顔を洗って、車で珠洲を目指した。
今月に知り合いが二組、能登を旅する。一組はソフトバンクの創業期に
いっしょに仕事をした夫婦。奥様は新卒で女学生みたいやった。
旅の途中にココ寒山拾得美術館にも立ち寄ってくださるらしい。
もう一組は、東京の天真庵の常連夫婦。珠洲のSという宿に二泊しながら、奥能登を
旅するらしい。残念ながらココは閉館で東京にいるけど、「旅の報告にあがります」とのこと。
彼は昨年デジタルマーケティングの本を著して、その世界では有名な人だ。
海沿いの景色を堪能しながら、大石学さんのCDをかけ、走っていると、「しおcafe」
なる看板が目に入って、車をとめる。珠洲は昔から「揚げ浜式の塩つくり」が伝承されていて、このお店
も店の近くで同様の塩つくりをしている。
天真庵の味噌作りや梅干しつくりにも、大活躍しているのが珠洲の塩。砂浜に海水をまき、
天日で浮いてきた塩と砂をあつめ、それにまた海水を入れて濃い海水をつくり、それを大きな鉄の釜で
20時間くらいかけて塩をつくる。言葉でいうと「それだけ」だけど、炎天下で家族でやっている
昭和33年の記録映画を近くの「道の駅」で見たけど、想像を絶する作業だ。思わず二度見た。
塩をきかせたノンアルコールのカクテルを飲んだ後の昼ごはんは「つばき茶屋」。
漁師さんが海の見える椿の里でやっているお店。あたり前だけど、魚は美味い。刺身定食(1500円)
に、ブリ、メバル、カワハギ(椿のようにさしみを飾る)、に山菜のテンプラ、しただみ(小螺)
が入った味噌汁がついてくる。イカの定食が「いかさま定食」だって・・なんとなく天真庵と同じにおいがした。
窓際に珠洲焼の花器に、淡いピンク色の椿が投げ込んであった。女将に「これ素敵ですね」
というと、「今朝山菜をとりに山に入った時にとってきた」という。山形に鳥海山というとこがある。
鳥になって海と山を自由に遊ぶ、そんな意味だが、ここ能登も海と山が近く、その風情がある。
「千枚田」と観光名所になっているが、そんな自然と特徴を生かした生活の知恵のなす技である。
お土産に女将が、たぶん有楽椿(織田有楽が茶室に好んで飾った)の枝を5本くれた。
満腹のまま、ある夫婦の家を訪ねた。昨年、能登の家の
近くの「道の駅」で手作りジャムを見つけ、九州の実家の土産にしたところ、大変喜ばれた。
退職後に「お互いに好きなことをしよう」ということで、自宅の倉庫を改装し、だんなさんは
「焼き物」、奥様が「ジャムつくり」の工房にしている。古希を超えているがおふたりとも
「いきいき」と生き暮らしている。「引退してからのゴールデン人生が素晴らしいですね」といって、
握手して別れた。今朝は、「いちごジャム」をヨーグルトにまぜて食べた。秀逸で筆舌を超えた滋味だ。
まさに、能登の「人生フルーツ」
その後は「珪藻土博物館」。珠洲の珪藻土を使った七輪は遠赤効果が強く、焼き鳥屋などで使われ、
品切れ状況が続いている。本家本元まで訪ねたけど、やはり品切れで、昔ながらの卓上の七輪をひとつ買った。
その後は、「宝湯」でひとっぷろ。珠洲温泉の公衆浴場。
ここは源泉を「重油」から「薪ボイラー」に変えて沸かしている。それから「お湯がよりやわらかくなった」と評判だ。
我が家も石油を入れれば、お風呂が沸くようになっているのだが、なるべく化石燃料に頼らなず生きる、を
テーマにしたいので、「薪ボイラー」にしようかと思っている。
「令和の五右衛門風呂」・・・古くて新しい風呂になると思う。
能登はやさしや土までも・・・という言葉がある。湯も人もやさしい。東京などか来るには、日帰りは
無理だけど、ここ「宝湯」では、泊まることもできる。前が酒屋(同族経営)で、宗玄など地酒も
買える。ガイドブックには載らない旅だけど、素敵な自分流の「たから」が見つかるかもなんばん。
万葉集の大伴家持の歌にこんなのがある 能登の生活をうたったものだ。
香島嶺の 机の島の 小螺(しただみ)を い拾ひ持ちて 石持ちて 付きやぶり 早川に
洗いすすぎ 塩辛に こごと揉み 高坏に盛り・・・