羽衣伝説

風光明媚な海岸には、昔から羽衣伝説があまた残っている。
少し難産だったけど、その代表格の三保の松原は世界遺産にまで上り詰めた。

能登の家の近くに海水浴場がある。「琴ケ浜海水浴場」といい、
鳴き砂で有名なとこ。昔、そこに美人の「おさよ」さんがいた。北前船で
にぎわう遊郭に身をおき、重蔵という同郷の漁師と恋仲になった。

ある日、重蔵の乗った船が遭難し、帰らぬ人になり、毎日おさよは海を見て
泣いた。それから身を患い、故郷に帰り、美しい海に身投げして死んだ。
それから、そこの海岸を歩くと、キュキュッと悲しい音がするようになり、
地元の人たちが「重蔵を思うおさよの泣く音だ」というようになった。

しばらく海の遭難が続き、おさよの黒髪を奉納して「黒髪神社」というのが立ち、
今でも8月には「おさよ祭り」というのがあるらしい。
昨日、海のものを買いに「立ち寄りパーク」に車を走らしていたら、新しいトンネルを
くぐった。入口に「おさよトンネル」と刻まれている。
名もないひとりの恋物語であるけど、海水浴場になったり、神社になったり、
トンネルになって、生きている。

ナビができて、効率よく道を案内してくれる時代になったけど、きまぐれに
「立ち寄り」ながら、旅をしていると、不思議な縁みたいなものに引き寄せられる
ことがある。道草や立ち寄りの「おかげ」で、おさよのような「恋」の物語も生まれる
のである。効率や損得だけで生きていると、濃い恋はできない。(ばくちのコイコイはできるかも)

人のいく 裏に道あり 花の山     

である。