日本人以上に日本人みたいな漆芸家

昨日、ラジオ(能登の家は、NHKしか聴けない)を聞いていると、
「能登に住む外国人」という特集があって、漆芸家の「スーダン・ロス」さん
がでていた。漆に魅せられて、22歳で英国から輪島に移住し、40年くらい
漆作家をしておられる。昨年の地震と豪雨のダブル被害で、アトリエと家が全壊し、
今は金沢で漆を作っているそうだ。

道具もなくし、友人たちから送られてきたらしいが、「必要な全部」は揃っていないらしい。
でも「予定していた個展」を断らず、「不思議と足らないもので工夫すると、新しい工法が天から降りてくる」
みたいなことを、英国なまりの日本語でのたまわれていた。つまり「ちゃねってる」のね。
「便利な暮らし」を追求した結果、扱いにくく(別にそんなことないけど)食洗機も使えない「漆」は、日本の食卓から消えて久しい。
一番の原因は、「日本人の棲む空間に、『官能性』がなくなった」のかもなんばん。

ぼくは、今、白湯を古伊万里のそばちょこにいれ、輪島塗のソーサにのせて、このブログを書いている。
朝は白湯を飲みながら、炭をおこしたり、掃除をしたり、から始まる。このソーサーは、輪島に工房がある
「塗師」(ぬし うるし職人)さんに頼んでつくってもらったもの。そばちょこでもいいし、珈琲椀でもいいし、
夜は久保さんの酒器をのせて、盃台(はいだい)として使っている。わずか10cm径強の丸いものだが、
これがあるだけで「能登くらし」が、どんなに「ゆたか」になっているか計りしれない。
残念ながら、その作家のアトリエも、昨年の地震で焼失しが・・。

お店でだしている「おコンそば」(きつねそば)は、合鹿椀(ごうろくわん)という能登の漆器で供している。
この椀は、能登の厳しい自然の中で、自給自足で暮らし、一汁一菜を旨としてきた「能登の特産物」みたいな器だ。
「二倍のおコンそば」の時も、ソーサーと同じ作家の漆の丼を使う。

2015年に出版されたスーザンさんの「漆に魅せられて」は、ネットで購入することができる。「漆芸家 スーダン・ロス」
で検索すると、彼女のいろんな動画もでてくる。
能登でしかうまれない漆器。英国のDNAをもって、しかも能登でしかできない「作品」を、ぜひ
「官能的なあなた」に、味わっていただきたいものだ。感謝。