先月の終わりに「パーフェクトデイズ」のロケ地巡りをして、辿りついた不思議な
ベルギー人カップルの話をブログに書いた。
だんだん、「5分前のことを忘れる」ような年ごろになってきたので、忘れていた。
昨日の朝、「ギャレット」を食べ、「ほぼぶらじる」と「パラダイス酵母シードル」を飲んでいたら、筆子さんが
「今日これから蒲田にいくよ」という。
彼女の生まれた街で、実家もまだあるし、能登からやってきて99歳まで生きたおばあちゃん、
その連れ合いで、弘前から大工見習で上京したおじいちゃん、筆子さんのお父さんが入った墓も蒲田にある。
墓参りにでもいくのか?と思っていた。
錦糸町から、品川乗り換えで二駅で「蒲田」だ。駅のテーマソングが「蒲田行進曲」。はじめて「高輪ゲートウェイ駅」
を通過。クリスマスの落語の「芝浜」の舞台になった場所。「芝浜駅」にしてたほうが、日本人の「精神的文化力」
が保たれたのではないかしらん。
彼女の実家は東口から歩いて15分。昨日は、西口から歩いて、スマホを見ながら歩きだした。
自分の実家を忘れたのかな?ついに、二人とも「老々徘徊散歩か?」などと思っていた。
もちろん、先天的な方向音痴のぼくは、「今 どこ歩いている?モード」だ。
蒲田駅の西口は、「バーボン通り」とか、猥雑な飲み屋街がある。それを過ぎると、閑静な住宅街に
なる。その一角の集合住宅の一灯に、昨日の目的地があった。
近所迷惑にならぬように、との配慮で、住所が公開されていない。そこで開催される個展は、
すべてスマホで時間を決め、予約の番号をもらう・・・・デジタル音痴に方向音痴のぼくには、
ぜったいにたどりつかない場所だ。
いろいろな器が、白い部屋の中に、並んでいた。「器の裏に〇のポッチがついているのが、売約済みです」
といわれ、何枚か裏を見たら、みな銀の〇ポチがついていた。
美人のギャラリーの人が、「ほぼ、売れました」とニコリ・・・
筆子さんが、「残りものには福がある」の呪文を唱えるように、一枚の皿を買った。
8寸(言い方が時代おくれ?でも八寸というのは、酒飲みには大事な寸法)くらいの皿で、44000円だった。
11月1日から昨日が最終日だったけど、6日でほぼ全部の器が売れた、らしい。
陶器が「冬季」といわれて久しいけど、そんな作家もいるのだと、びっくりしながら、蒲田駅に
歩いてもどる。
「ところで、あの器の作家は誰なの?」と筆子さんに質問。
「こないだきて、花膳を食べたカップルの女性」と返ってきた。まるで白日夢でも見ているような気分になった。
駅前の居酒屋で一杯飲もうと思っていたけど、「芝浜のオチみたいだなあ」と思い、
蒲田行進曲におくられながら、押上村にもどってきた。感謝。
「芝浜のオチ」とは・・・
「よそう。また夢になるといけねえ」