能登の赤崎という漁港に、古民家を改装した宿「TOGISO」
という「宿」がある。検索すると、きれいな海や囲炉裏や、新設
したカフェの写真がある。オーナーの佐藤さんは、山形の出身で、
東京で新しい形態の不動産業みたいなことをやりながら、東京・能登
の「二股暮らし」(デュアルライフ)を楽しんでいる。
「管理人制度」というのがあって、そこの宿泊の人のために、釣り場を案内したり、
時には、いっしょに釣りや「もぐり」をしたり、釣った魚を囲炉裏で焼いたり、酒を
組み交わしながら談論風発したり、「ただの民泊」ではなく、「能登暮らし体験型の宿」だ。
カフェのオープンの日には、「一日店長」をお願いされ、桐の箱でつくった「珈琲器具入れ」
を持参して珈琲を淹れた。カウンターの中でちゃねって、その道具箱が「水出し珈琲の器具」(和っち珈琲)が
誕生した。佐藤さんが東京で仕事をしている時は、江戸川区に住むまどかちゃんが管理人をつとめる。
「能登里山空港」まで飛び、それから「乗合タクシー」で「TOGISO]にいく、という交通手段で
東京と能登の「二股暮らし」をしている。時間があえば、いっしょに「橋本食堂」にいったり、
こないだは、「漁師さんにいっぱい魚をもらった」という電話があり、包丁と能登ワインを持参して、
料理をつくり、ワインを楽しんだ。外浦は夕陽がきれいで極楽浄土を体感する気分。東京ではできない「贅沢な宴(うたげ)」である。
能登で一番栄えているのは、和倉温泉のある七尾地区。そのおかげもあって、まだ鉄道が生きていて、
道すがらの地域(中能登あたり)や終点の穴水までは、古民家を改装してカフェや民泊施設などが、あまたできている。
それとは反対に外浦といわれる志賀町は、交通手段が車しかない。でもその不便さが、とてもいいのだ。
東京と同じ感覚で生きていってもしかたない。便利さよりも、不便であることによる自然の恩恵とか、
できることは自分でする、という人間本来の「生」の喜びみたいなものを享受すること多しなのだ。
「TOGISO」というのは、「富来荘」。志賀町の赤崎やぼくが住む前浜地区は、合併されて「志賀町」になる
前は、「富来(とぎ)」という地名だった。船乗りさんを輩出したり、漁師たちで栄えた街で「富(とみ)が来る」
という縁起のいい地名。土地の人たちも、そんな旧地名に誇りをもっていることを知った佐藤さんが
その名を冠した名前で「TOGISO」をつくった、というわけだ。
その志賀町のキャラクターが「あかりちゃん」。日本一古い木造の灯台がある「福浦」
という港にある灯台がモデル。北前船が寄港したり、渤海(ぼっかい)との交易で栄えたところで、
遊郭の跡なども残っている。なんとなく、亀戸・鳩の街など「花街」の残り香がする「押上地区」
と共通の雰囲気が漂う街だ。前日、そば打ちにきたMちゃんが、自作の「醤油」と「のざわな」を
もってきてくれた。「福浦あたりの古民家を改装して、オフグリッドな『カフェ』をやるってどう?」と投げたら、
「おもしろそう」といって、笑っていた。
映画「リトルマエストラ」の舞台になった素敵な港。
朝まずめにタコを釣る 朝ごはんの跡はUFOで焙煎 タコが釣れた日は メニューに「あこがれのタコガレあり」
が加わる。海が見える3席のみのカウンター。少し都会で疲れた人たちが、一息つきにくるお店・・
夕陽が沈むころがかんばん。そこからは沈む夕陽を見ながら、能登ワインを飲む・・・・そんな暮らし。
風の時代・・・・自分「らしさ」を、それぞれがやっていく時代がきているかもなんばん。感謝。