ヤマガラを急須からはじまった「風狂の旅」

能登の家にあった輪島塗の朱色のお膳をひとつもってきて、
久保さんの新作「隕石入り急須」「隕石入り宝ひん」をふたつづつ飾った
ら、この週末にふたつ嫁いだ。しかもきれいな女性ふたり・・

久保さんの三重県のアトリエにはじめていったのが、2000年前の20世紀のとある日。
窯の横に、生まれたばかりのお皿や酒器、花器・・・などが並んでいた。
その中に、かわいらしい焼き締めの急須があり、「ヤマガラみたいだ」と思って、「これ東京に
もっていっていいですか?」(もちろん、自腹で購入。器の世界に入っていく瞬間だった)。
その足で、福岡に帰省し、八女の星野村に2泊して、お茶の農園さんから、煎茶と玉露を買って、
やまがら急須でいれて飲んだ。今も毎朝、この急須でお茶をいれる。

ちょうど、そのころ池袋でギャラリーをはじめ、寒山拾得の絵をかく南條さんの絵と、久保さんの器を
リュックに忍ばせ、ニューヨークにいった。今はないけど、セントラルパークの近くに「エセックス ニッコー」
という日航が経営するホテルがあって、そこに一週間ほど泊まって、ギャラリーや美術館めぐりをした。
ITの仕事をする時は、スーツを着て、それ以外は紺の作務衣に雪駄を履いて、いろんな場所を徘徊した。
その恰好が目立ったのか、朝夕にいくカフェや、ギャラリーの人たちと、すぐに顔見知りになって、まるで
ニューヨークに10年以上住んでいるような気分になった。今でも付き合いが続くニューヨーカもいる。

2000年、まだツインタワーがあったころ、ソーホーで、南條さん、久保さんの展覧会を企画した。
今、お店で使っている「白い珈琲カップ」(まだ、そのころは王子が地球にきていないので、隕石入りはなかった)
は、ニューヨークでもよく売れた。ペアカップとして、2客で販売していたけど、「一客だけでいい」という
要望が多かった。「ニューヨークのやからは、ケチだな」という印象を受けたが、その後日本でも、器の五客セットだの、
お客さん専用の器、夫婦茶わん、ペアカップ・・・などは姿を消していく。核家族社会になり、器のありようも
変わっていった時代。大事な「ゆたかさ」が消えた時代でもある。

そのころ、田園調布と自由が丘と渋谷の3店の器のギャラリーに、久保さんの器を入れるようになった。
ITの会社をやりながら、組合の理事長をやりながら、ギャラリーという三足の草鞋生活だったので、
東急東横線でつながった名店3店を、一日かけてめぐり、3人の美人オーナーをくどいて、お付き合い(あくまで器の)
をお願いした。吉兆で修行中のながやくん(今、早川で「ながや」のオーナー)、や織田流煎茶道の家元
なども、そこで出会い、ながやくんには、「魚のさばきかた(いきなり最初がスッポンやった)」「そば豆腐」「卵焼き」などを習い、織田流では「正教授」の看板までいただき、お店の隅っこ(いや、いちばん目だ立つとこ)に飾ってある(笑)

急須が我が家にきてからの顛末は、おどろくほどおもしろおかしく展開していった。
「お茶の葉」「ちゃわん」「囲炉裏」「茶櫃(ちゃびつ)」・・・少しづつ縁あるものを増やしていくのは楽しいし、
人生をゆたかにする。よってくる人とのふれあいも異次元になるよ。

銀座の「隕石カフェ」では、新しい久保さんの隕石急須で、煎り番茶をいれてくれる。
天真庵では、千利休以来の茶の革命みたいな、「和っち珈琲」で、アイスコーヒーをだすようになった。
若くてきれいな女性が、二日つづけて、「茶器」をもっていかれた。彼女たちの「これから」が
とても楽しみである。彼女たちのかたわらで酒を飲んでいたふたりの常連さんたちが「きれいな人たちですね」という。
「きみらもお茶をやるようになると、モテ期がくるかもなんばん」と答えたけど、彼らには真意が伝わるはずもない。
「感性の時代」がくるといわれて久しい。一部の「ひと」たちには、そんな時代がきているように思う。

お知らせ
9月12日から上野の東京国立博物館で、「寒山拾得」のイベントがあります。

そのところに、寒山拾得とは。。。があったのでご紹介。うちの「お花やお茶の会」を別名「風狂の会」と呼んでいた。

「寒山拾得かんざんじっとく」とは?
寒山と拾得は中国、唐時代に生きた伝説的な詩僧で、世俗を超越した奇行ぶりは「風狂」ととらえられました。中国禅宗では、悟りの境地として「風狂」が重要視されましたが、寒山拾得の脱俗の境地は、仏教に通じるものとして、中国や日本で伝統的な画題として数多く描かれてきました。
その世俗にとらわれない暮らしぶりは、森鷗外や夏目漱石といった日本の近代文学にも取り上げられています。高い教養を持つ文人であるにも関わらず、洞窟の中に住み、時には残飯で腹を満たすと言った脱俗的な振る舞いは、世俗世界の現実からの逃避に憧れを抱いた知識人たちを魅了したのでしょう。

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