女子たちは元気だ。80を超えたばあちゃんが3人で組んで、「さんば」、正確には、
「もちよりパン サンバ(SANBA)」が近所にできた。
火曜日の午後、近所の「お世話しあうハウス」の女将が、ニコニコしながら
お店に入ってきた。「サンバ、で、イートインしてきたから、ちょっと少なめのホボブラジルを
いつもよりうすめにしてちょうだい」とのこと。「デミくらい?」というと、「もうちょっと多めね」
という。いつものように、久保さんのオリベの土瓶に、輪花ドリッパーをおき、漉し布(ネル)で、
ホボブラジルを出す。
「これおみあげ」といって、サンバのパンを5個土産にくれた。みんなラップでくるまっている。おばあちゃんたちが
トンクなどを使わず、手でトレーに入れられるように配慮しているらしい。さすが。
和のお惣菜がいろいろ工夫されていて、「ごはん」
みたいなパン。「ごぼうのパンは、歯が心配だったら、小さく切って食べてね」。
さすが、お年寄りの面倒を毎日見ている女将。80歳が66のぼくの歯を気遣ってくださる。
ここのお世話しあうハウスの人たちが、ときどきニ三人(ときには4人)で、そばを手繰りにきてくれる。
みんな耳が遠くなっているので、声が大きい。しかも、お互いに馬耳東風よろしく、好きなことを
勝手に、しかもなんども繰りごとのように話し、そのたびに、新鮮に相槌打ったり、笑ったりしている。
女子たちが、元気な秘訣がここにある。かみ合っていない会話が、なんだか楽しそうだ。
人はみなこころの根っこの部分に、いろいろな抽斗(ひきだし)をもっている。その中身が「楽しいもの」の人は、
いつも前向きで楽しい。反対に「恨み、妬み」が入っている人は、まわりの空気まで暗くする。
昨日はかっぽれ女子たちが集まって、お仕覆の会。先月放映された「もやさま」で、一躍有名に
なった「まさこさん」(かっぽれの先生 82歳)も、元気な姿をだした。
ぼくは、昼ごはんのガレットを焼き、珈琲の用意ができたら、お役目ごめん、で、
いつものように、亀戸界隈を徘徊散歩。
こないだ「框(かまち)」を衝動買いした材木屋にいって、そのかまちを使って「囲炉裏」をつくる打ち合わせ。
能登の家にもっていく計画だったけど、東京のお店で使おうと思い直した。
すると材木屋のオヤジがニコっと笑って、「完成したら、そこで一杯やろう」ということになった。
「おちょこを置く時の音がいいんだ」といって、一献するように手を口にもっていく所作。
大工は左手で「鑿(のみ)」を使う。だから昔から酒飲みを「左党」といった。
けっして、麻丘めぐみの歌が起源ではない。
そこから徒歩3分の骨董屋にいく。囲炉裏の話をしたら、大喜びで、「お祝いにこれあげる」
といって、「どうこ」をくれようとした。値段シールに33000円とある。銅壺。
時代劇ではよくでるけど、江戸後期頃から囲炉裏の余熱を活用した銅壺(どうこ)という道具が現れた。これは囲炉裏端で、飲み手が都合のいいように燗づけしてお酒を楽しめる。チンとは似て非なる情緒。茶事の「お預け徳利」みたいなもんや。しかも燗酒がとびきり美味くなる。
「ふたつもっているので、これはいいよ」と断わって、傍らにあった藁の鍋敷きを指さし、
「これちょうだい」といったら、「2000円ちょうだい」といわれた。相変わらず、つかみようのない
飄々とした店主。井伏鱒二の「珍品堂店主」みたいなフンイキを醸し出している。
女子は、時と場所を選ばず、元気に談論風発できる。男は黙ってサッポロビールか、
気のおけない仲間と囲炉裏端で静かに飲むべかりけりか?感謝。