先月の寒さは半端じゃなく、能登の集落の人たちは、断水で5日くらい苦労されたらしい。
「こんでよかったね」と、みんなにいわれた。2月は毎日味噌つくりを伝授していたので、毎年能登へは
これない月間。能登の冬は「なめたらあかんぜよ」だ。
能登の家の裏山に小さな神社がある。「えびす神社」。
この地にたどり着いた九州の海賊さんや漁師さん、海女さんたちが、海の神にお願いした歴史があり、
沖に向かう伝馬船には、黄色の「蛭子神社」の旗がなびいている。地元の人は「ひるこじんじゃ」と呼んでいる。
その神社のある里山を少しのぼったところに湧き水がでる場所があり、男水が右、女水が左とふたてに分かれた清い水が、
田んぼや、生活用水として人々の命脈をつかさどってきた。ライフラインを失った先月、久しぶりに
その湧き水が大活躍したみたいだ。今朝早朝にはじめてその神社にお詣りした。きれいな水が湧き出るところには「龍神さま」
がおられる。
東京にも銀座ともまた違った人気がある「えびす」という街がある。小さなトレンドに一喜一憂したり、
セレブとかいう言葉が似合う「うたかたの巷」だ。能登の「えびす」には、カフェもブティックもないけど、
うぐいすが鳴き、地面には蕗の薹が咲き、藪椿が春をつげる真っ赤な五弁の花を咲かせている。見上げれば龍みたいな雲がいっぱい。心を精妙にして整えると、龍神さまの足音が聞こえてきそうな聖域でもある。山中独居の暮らしというのは、こんな空気感なのだろう。
「夜 かすかな雨の音 風の音 これは 仏さまが この世を お歩きになる 足音です」(念仏詩人?榎本 栄一 「足音」)
椿落ち 杜(もり)の湧き水 みぎひだり ぶつぶつ詩人?野村栄一