能登おでん

能登にくる時、氷見のお寿司屋「すしのや」に立ちよるのがならわしになっている。
回転すしだけど、ちゃんとカウンターの中で、ヒトが握ってくれる。
「地元三種」(地元であがった魚の寿司三貫 300円)とか、「朝どれ三種」
とか、「ブリ三種」とか、「さば三種」なんかを適当に頼み、ノンアルコールビールを
飲みながら、だいたい滞在時間30分、お勘定はひとり2000円くらい。
「おまかせランチ」とか、1000円前後のランチメニューも人気で、開店11時を30分
くらい過ぎると、満席になる。「氷見の日」(一二三(ひふみ)の一三?)は、特別安くなるので
お店の前に行列ができる)。

その後、近くの本屋に立ち寄って、休みの間に読む本を買う。「和風住宅」(新建新聞社)という雑誌を見つけてカゴにいれた。
岐阜の「すや」が大きく紹介されていた。古い知り合いで、ぼくのそばの師匠の「そばや」(広島時代の)を
設計した白井昱磨(しらい いくま)さん設計の「栗菓子やさん」。
天真庵の時計とか、照明器具なども、白井さんが開店祝いにもってきてもらったもの。
「こんな古色蒼然とした長屋でカフェをやるには、カウンターと照明器具をどうするかがカギ」とのことだった。

その後文庫本のコーナーを徘徊。ここの本屋は、オススメの本をお店の人のコメントが手書きで紹介してある。
「コンビニ兄弟」という本のコメントがおもしろく、それがなかったら絶対に買わないであろうタイトルの
本をカゴにいれた。九州の門司にある架空のコンビニ「テンダネス」を舞台に、そこに通う中学生から老人だちの
「点と線」の悲喜こもごもな物語が6話。「ビビンコ」みたいな濃い北九州弁はでてこないけど、さすがに地元に
住んでいる作家・町田そのこさんのセンスが光っていて、あっという間に完読。
高倉健さんの最後の映画「あなたへ」の舞台にもなった門司港を舞台にした描写も素敵だ。
老後に住みたい街の筆頭にある「北九州」で、架空のコンビニの上が老人専用のマンションという設定。
ぼくは地元の人間だけど、この本を読むと、ほんとうに「北九州に住みたい」と思うかもなんばん。

昨日は、珠洲の塩やさんに塩を買いにいき、珠洲の珪藻土七輪屋さんにいき、七輪などを買った。
昨年の6月に全壊した窯も、クラウドファンディングで再興し、昨日は東京の焼き肉やさん御用達の
大きな七輪が窯入れされていた。壊れた窯を見た瞬間に「ちゃねって」しまって、珪藻土焙煎機「UFO」
がうまれた。今もっても不思議だけど、この窯の前にたつと、宇宙とつながっているような気がしてくる。

その後は、富来(とぎ)のおでんや「橋本食堂」へ。
カウンターに座った知り合いのじいちゃんが「こないだ、ヤセで東京の女性が飛び降りたぞ。まだ見つかってない」とのこと。
能登の家から600mくらいのところにある「ヤセの断崖」。そういえば朝、消防団員たちが4人もいて、捜索していた。
北九州出身の作家・松本清張さんの「ゼロの焦点」の舞台になった断崖。それから自殺の名所になった。
カウンターのじいちゃんが二杯目のビールのジョッキをあけた瞬間、「田舎は、嫁さんがきてくれんのが
大問題や。いろんな事情があるんだろうが、死ぬ前にこちらの男と一回お見合いでもしてくれたなあ・・」とポツリ。

コンビニもマンションもないけど、田舎には田舎しかない「宝」がいっぱいある。感謝。