五月の風が吹いたら、能登にイルカがくる

風薫る能登路を気持ちよく走ってきた。
空気がおいしい。先日のお昼、カウンターに若い女子がすわり、
蕎麦を手繰っていかれた。「能登おしの理由はなんですか?」と聞くので、
能登と東京の二股暮らし(世間ではデュアルライフとかいうらしい)の顛末を説明した。
「能登のどちらに?」と質問されたので「志賀(しか)ばい」と九州弁で返した。
志賀島とこの志賀はどうも根っこが繋がっていると思うっちゃん。
すると女子が「うちのおばあちゃん、志賀町に住んでいます」とのこと・・
たぶん、いつもタコ釣りにてくてく歩いていくエリアらしい。

そんな不思議な縁を感じながら、今朝は5時におきて、タコヤンをもって、いつもの海に歩く。
里山の木々には、巣食うように、薄紫色したシンクラメン、もとい萩が満開を迎えている。
縄文人は、萩が咲くと、イルカがやってくる、ということを知っていて、結(ゆい)で協力して
イルカを捕獲し、みなでわけ、イシリという魚醤で保存した。その「生き方」や「宗教観」や「食」
が今も日本人のDNAに残っている。

今朝は潮がひいていたので、海の底に、ナメコやサザエやあわびなどがよく見えた。
4年前までは、見えなかったけど、最近はタコが見えるようになってきた。
5分くらいして、岩場の小さな穴にタコの足を発見。そこにタコヤンを近づけたら、「眠いよ」
という感じで足ではらう。その足がタコヤンの針にひっかかり、水面まであがり、あと30cmで
あがる、というところでばれた。
それを見ていたタコすかしの名人じいちゃんが、「はらへってないタコやね」「それと産卵期で、食欲
よりアッチの欲のほうがかっとる時期なんや」・・といって、ブラックとかかれた缶珈琲を飲みながらカカっ
と笑った。数日前に、貞子さまに教わった「愛欲」といっしょ。タコも人間も・・・

沖からかえってきた漁師さんが、「そばのお礼」といって、グレとタイをくれた。
グレは、関西ではメジナ、九州では「クロ」といって、青黒い体につぶらな瞳の魚。
さっそく、ウロコをとって、三枚におろして、今朝は朝から高級魚が食卓にあがる。
炭火をおこしたので、塩焼きにしようと思う。ソテーにしても、クロは美味い。

朝飯が終わったら、炭火を七輪にうつして焙煎。明日、輪島と珠洲のお店に納品して、
次の朝、九州に向かう。