すっかり春めいてきた。作務衣(さむい)の上をきていると、蕎麦打ちや焙煎の時に汗ばむようになってきた。
ついこないだまで、さむい、といっていたのがウソみたいだ。
昨日はポカポカ陽気だったので、うらぶれた十間橋通りにもひとがでて、3時前にそばが売り切れになった。
小腹がすいた人は、ガレットしかなくなるので、ひたすらフランス人よろしくフライパンでガレットを焼いた。
蕎麦粉を水でとき、テフロンのフライパンにいれ、とろけるチーズとのりをのせ、焼けたら二つ折りの半月にして、
醤油(お店ではかえし)と柚子胡椒で食べる。酒のつまみにもいい。うちでは、パラダイス酵母でつくったシードル
があるので、それとあわせると「黄金のペアリング」である。(パラダイス・・はメニューにはのせられないばってん)
生まれる前(お母さんのおなかにいた)から天真庵の常連さんだったカンカン(パンダじゃない)がこの春近くの小学校の一年生になった。
昨日はその報告も兼ねて、家族で蕎麦を手繰りにきてくれた。
カンカン「エーチャン クイズがあります。わたしのランドセルは何色でしょうか?1・ピンク 2・水色 3・キャメル」
卵焼きとか、そばがきとか、そばが3つ・・・大人が話かけてくると、顔をしかめてシカとするような場面だけど、ここは
おめでたい瞬間、ぐーと我慢して「ピンクやろ」と答えたら、「ブー」だった。正解はキャメル。
本人はピンクを希望したらしいが、両親ともタッパ(背)が高いので、かんかんが高学年になった時のピンクのランドセルにブーを
だしたということだ。さすが親だ。
かんかんのお姉ちゃんのユウカちゃんは4年生になった。ぼくとドラエモンと誕生日が一緒で9月3日生まれで不思議な縁をお互いに感じている。
どこで仕入れてくるのか、子どもの成長を喜び、普段よりお酒のメートルがあがった父親に「おとうさん。酒は飲んでも飲まれるな、でしょ」
と手厳しい。間髪をいれず、こっちのほうに向かって「エーチャン。私大きくなったら、そばの弟子にしてちょうだい。」ときた。
「ええよ」と答えたら「それまで死なないでね」とのこと。
天真爛漫というか、忖度や言いたいことが言えない世の中にあって、子どもたちの存在は大きいなと思う。
押上小学校の生徒たちは、毎朝カルガモの親子のように、上級生が先頭でみんなと登校する時、お店の前を通る。
お店が15周年を迎えたので、開店のころ小学生だった子たちが、成人式を迎えたり、彼氏とデートにやってきたりする。
こないだシュナウザーを散歩していたミキちゃんが「おはようございます」と声をかけてくれた。彼女は小学校のころから、
家に帰る前に、天真庵のドアを開けて手をふりながら「ただいま」といっていた。今年24歳になるそうだ。
ランドセルといえば、妹の長男のコウタくんが、福岡の小学校に入学するとき、銀座の三越でランドセルを買って
お祝いにしたことがある。そのころ、博多には地元のデパートの井筒屋デパートと玉屋デパートか、大丸くらいしかなかった。
コウタくんが「これ、東京の三越で買ったっつえ~」みたいに自慢してたもんだから、先生から妹にクレームが入ったことが
あった。そのコウタくんも今年40になる。歳月人を待たず、の詩をかいた陶淵明の時代から、時間は人を待ってくれないようだ。
明日から「能登休み」23日(土曜日)から通常営業。