ぐらり能登

能登を紹介するフリーペーパーに「ぶらり能登」というのがある。毎年の暮れにできる。
お店の片隅に積んである。味噌つくりの期間は、家族でこられる人などが
多いので、みなさん「新らしいぶらり・・」を読むのを楽しみにしている人が多い。

昨日はいつものコースで、東京から能登へ。
途中の「新井」で、道の駅に歩いていって、そこで野菜とか山菜などを調達するのだが、
雪景色の中を迷いながら長靴をはいていく。除雪車が、いろんな場所に雪を寄せてくれているので、
見慣れた景色が、ホワイトアウトされたみたいに、右も左もわからなくなる。いずれいく道、認知症に
なって自分の家がわからなくなる感覚を味わう。ちょうど道の駅の直売所のお姉さあんが出勤されていて
「おはようございます」と挨拶された。あたりまえの朝だけど、こんな雪深いところで生きている人たちの
すごさ、を痛感。その道の駅にふきのとうを見つけた。冬眠からさめた熊が一番最初に口にいれる山菜。
都会で見るそれとは、まったく違うモノに見えた。ふきみそをつくり、ぬる燗のアテにして、熊ではなくトラ
になってみたい気分。

いつもとは違うインターでおりた。音楽を聴いていたら、いつものインターを通りすぎて、8k先の
ETC専用の出口から降り、いつもの氷見のすしやを目指す。高岡の街をはじめて車で走る。
能登と東京を往復しながら3年過ぎた。すこしうらぶれた街の片隅に、ずっと地元の人に愛されてきた
チェーン店ではない、個人で経営しながら、季節の地物をさっと料理されたものがでてくるような居酒屋で
一杯やりたいと思う。「これ」と思うようなお店を見つけると、ナビの住所を頭に入れ、古道具屋などが
近くにあると、お店の名前を頭の中で繰り返し復唱しながらウキウキしている。

能登に入り、外浦の海が見えてくると、「帰ってきた」という気分になる。「ころ柿の里」という道の駅の
中にある温泉につかり、休憩所で「北國新聞」を読んでいると、地元のひとになった気分になる。
すぐ近くの酒屋さんで、竹葉の季節限定酒、遊穂などの一升瓶を4本調達。頼まれていた珈琲豆も納品して自宅へ。

その日は、料理せず、あるもんで酒を飲む、がならわし。
「新井」で買ってきた豆腐を、東京からもってきた「牛筋大根」に入れ、囲炉裏の上にかけてあたため、
熱燗を飲みながら暖をとるように飲む。2か月近く留守にした能登の家は、想像以上に寒く、温まるのに
時間がかかる。いつもは、「どんなに飲んでも2合半」くらいになった酒量が、倍近く消費される。
「これもまた、地産地消のひとつだ」なんて勝手な言い訳をしながら黙々と飲んだ。
静かな能登の家で深い眠りについたが、深夜ぐらりと揺れて目が覚めた。「ぐらり能登」だ。感謝。