弥勒の世界・・縄文時代の集落

能登には、縄文遺跡がたくさんある。能登町の真脇遺跡は最たるもので、
狩猟生活を中心としていた縄文人が、ながく一か所に定住し、争いもなく、
みんなで協力しながら生き暮らしていた痕跡が、今でも残っている。
男たちは狩りにでかけ、女たちは祭器のような土器をつくり、天地いっぱいの恵みと男
たちの無事を祈った。能登の縄文人たちは、春に対馬海流にのってやってくる「イルカ」
が、藤の咲く季節にやってくることを知り、協力してイルカを捕り、みなでわけ、醸す技術を
身に着け、「いしる」を含め、醸す方法を工夫した。今でも、そんな原始的ではあるが、
天地自然の理にかなった暮らしの智慧が、当たり前のように残っている。

そして、ひとつの集落(国家)の単位が、50人。その中のボスは、包丁さばきができる
人であった、とか。「宰」という長を現わす字は、包丁の象形文字が変化したものらしい。

先日、うちの集落の「総会」があった。働き方改革で、自主的に漁を禁止している日曜日の朝八時半開始。
朝の六時に「さざえさん」や「まちぼうけ」などの音楽が鳴り響く、早起きの街。
いつもの「朝飯前」の仕事をし、朝ごはんを終えたころ、が8時半。
司会の区長さんが年頭挨拶・・・「昨年は4人がなくなり、住人が50人を下回り、49人になりました」
とのこと。瞬間に「縄文の弥勒世界だ」という声が天から降りてきた。
争い(戦争)もなく、みんなで協力しながら、陽気に暮らしている弥勒の宇宙。

万雑(まんぞう)という、みんなで協力しながら、神社の草刈りとか、川の掃除、お祭りの費用、冠婚葬祭、
そして、それらの出費と、収入の損益計算をして、一家あたりの「協力金」みたいなものを
出すお金・・・・この金額を、きめるのが総会の一番大事な事案だ。地方自治体も、少子化高齢で税収不足を
原因に、赤字が増え、日本は天文学的な赤字が増え続けている。そんな中で、50人を切った、限界集落の
模範みたいなところが、みんなで協力しながら、少ない額ではあるが、「黒字経営」が成り立っている。
結果、昨年まで15000円、年間3万円の万雑が、10000円、年間20000円に値下がりした。
みんなで「おー」という声が起こり、拍手が鳴った。
古くも、新しくもない「ほんものの資本主義」の原型みたいなものが、ここの暮らしの中にある。

一時間ほどで、総会が終わり、なんだか爽快な気分になって、輪島のお店に珈琲豆を納品し、
梅茶翁にいって、炭火焙煎の伝授の会。
このペースでいったら、とてもじゃないけど、間にあわなくなるので、東京時代に焙煎を習いにきた
お弟子様の「しんごちゃん」に、炭火焙煎のコツを伝えた。
その後は、みんなで新年会。昨年みんなで開墾し、田植え、稲刈りをした「お米」をいただき、「じゃ次は3月」と、
陽の沈む極楽浄土みたいな能登路を走って、志賀の家に戻る。
「縄文なるもの」の暮らしの本質みたいなものに、少し近づきつつある。
今週は、能登に移住して、自然農で大豆をつくっている農家さんを訪ね、大豆を車に積んで
東京にもどる。来月は、「味噌作り」の毎日。能登くらしは3月までお預けだ。