押上の不動産情報

15年前に、ここ押上に天真庵を結んだ。それまでは池袋。
上池袋という住所で、道をへだてた前の住所は、北区滝野川・・
つまり、豊島区と北区の境目だった。一時、北区滝野川のマンションに住み、
豊島区から北区に会社の登記を移した時期がある。ITでめちゃくちゃ儲けていた時期で、
会社の少ない北区にいると、税務署の恰好な餌食(別に、脱税も節税もしてへんかったけど・・)
になるので、また道をへだてて、「お化け屋敷」といわれた、不思議な家で、会社とギャラリーと自宅を
兼ねて暮らしていた。家賃は月50万で、しばらく住んで更新料やなんやと計算すると、一億くらいかかった。
香辛料を買うお金もなかった(笑)

上池袋の家のまわりは、新しいマンションが雨後の筍よろしく立ち始めた。
そうすると、建築中は現場の人たちが近くのスーパーやコンビニで買い物をし、にぎわいを見せるけど、
立ってしまって新しい住民が住みはじめると、みんなローンレンジャーになって、夫婦そろいで朝から
晩まで働きにでて、帰って寝るだけの場所になるので、地元の商店街は閑古鳥が鳴き始める。そのころはアマゾンなどはなかったのに、
そんな感じだった。人口は増えるけど、寂しい街になっていった。月に一度、その当時からいく歯医者に
いくけど、寂しい街のまんまだ。東京という街はだいたい平均そんなふうやと思う。

押上にきて、壊れそうな長屋に手書きの看板が斜めにかかってあり、「豆腐屋」とか「酒屋」とか「さかなや」
などの前を散歩するだけで、「生きてる」という空気をすえるようになり、元気になっていった。
天真庵の改装をやてくれた若者たちも、「うちにも空いてる長屋があるんだけど・情報」をたよりに、
自宅やアトリエができたり、カフェやシェアハウス、ゲストハウスなど、時代とともに、長屋がじょうずに生かされて
きたように思う。この数年は、「オリパラ景気」と「インバウンド景気」をあてにした大手が企画するマンションや
建売が増えてきた。そうなると、上池袋と同じような運命をたどるのではないか、と危惧している。なんとなく
街から活気が消えていくのだ。

ぼくの「蕎麦打ち教室」も、最近若い人がくるようになった。ちゃんと生活設計ができているのか、
30代そこそこの人たちが「持ち家」(マンションを含む)さんたちが多い。親しくなると(ならなくても)、
何年ローンなのか・・とかをきくと、びっくりする。30年以上が当たり前。
間髪をいれずに「今の家(マンションも)は、30年持つの?」と問う。みんな「そんな先のことわからない・・ボリボリ」
というのだが、そのころはこの星にいないであろう身でありながら、後輩たちの未来が案じられてしまうことが多い。
昔はナリキンやヤクザのご用達車だった「ベンチ?」とか高級車に、堅気のひとたちが載るようになったのも、
不思議な金融商品に、家と同系列に車もなっているんだなあ、というのがわかる。

昨日は郷土の後輩、「ハチコーサッカー部のキーパーだったくん」が、蕎麦打ちに入門してきた。
まだ30歳前で、奥様と生まれたばかりの女の子をつれてやってきた。
近くの建売を買って、やはり長いローンレンジャーにアスリート魂で挑戦するらしい。
この界隈には、大地主というんがいて、「借地」が多い。古くからの悪しき慣習みたいなもんで
定期的に大きなお金を払うシステムになっている。借主優位になっている、と法解釈されてきたけど、
実際に住んでいる人たちの声を聞くと「さにあらずや」の声が多いような気がする。
うちの並びに、新しい建売住宅が売り始めた。営業のにいちゃんが、声かけてきたので、ちょっと聞いてみたら、
約5000万でしかも借地。
スカイツリーができたからこっち、今どきの不動産価値としては、「スカイツリーが見えて」(どこでも見えるけど)、
通勤が便利で・・・なんていう「安心と安全」みたいなワンパターンなフレーズで人気があるみたいだけど、
明日きてもおかしくない大地震の時に、ゼロメートル地帯のこの界隈はどうなるんだろう?なんてこと考えたりすると、
ぞーとすることも多い。すぐ近くに5歳の赤ちゃんと夫婦ふたりで1DK・月9万(これは安いほう)で暮らして
いるお弟子さまが先日蕎麦を手繰りながら「引っ越しようかどうか悩んでいます」というので、「もう少しじっくり考えたら」といって、
「能登」という雑誌で「移住」という特別号を古本屋の親父よろしく「これ読んで家族会議してください」
といって手渡した。

蕎麦打ちが終わり片づけをしていたら、近所のシャアハウスに住む、なんやら専門学校(近くに昨年できた)の二年生が
「これ返しにきました」といって、「隕石屋の本」(先週・うめ星を二個買っていった時に貸した)をもって
きた。彼は踏切近くにある「踏切長屋」というシェアハウスに最近引っ越した。値段を聞くと
「6万5千円」・・・こんな不景気な時代に、親の仕送り平均9万円も大変だろうけど、そのうち家賃に6万5千円
だと、残り2万5千円。本代などをのぞき、一日に学生が使えるお金の平均が「660円」という現実のくらしが見えてくる。
学生街の喫茶店で、珈琲を飲みながらボブデュランを聴いていた時代のほうが、「ゆたか」だったのか?

今日の営業が終わったら、能登へ出発。
20日(土曜日)から営業。
今回は、雑誌の取材とか稲刈りをしたり、けっこう忙しいく、
お金を使う暇もない。
辛味大根が収穫の時期がきたのと、タコが大きくなってものが釣れるのし、
蕎麦と珈琲豆を土産にもっていくと、10日分のエンゲル係数を計算不能に
なるくらいの「野菜や魚」をいただくので、いつも「原始的ぶつぶつ交換・出費ほぼ0円」
の能登くらし。みんながこんな暮らしをはじめたら、環境問題や過疎化の問題、自給自足率
もあがって、「知足なくらし・日本」が実現できるのにねぇ?・・

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