ドラエモンの誕生日スペシャル

昨日はドラエモンの誕生日だった。
歳をとってくると、友達の誕生日よりも、家族や友達の「命日」の
ほうが、カレンダーに多くなってくる。
8月26日は、は親父がなくなって3回目の命日。翌日は、
ジャズドラマーで、大石学トリオのドラマーだったセシル・モンローの11回忌。
ぼくの誕生日の前日は、親友のまったいの奥様の命日・・・
そんな具合のカレンダーが、どんどん更新されていく。最近は、天国に移住した人たちとも、
なんとなくまだ生きていて、繋がっているような感覚になってきたので、別に「死」が特別なことではなくなってきたけど・・

そんなわけで、昨日は「おめでとう」といいながら、カウンターにとまる友達がぽつぽつ来てくれた。
夕方には、ぼくの還暦の日からこっち、毎秋の誕生日にライブをやってくれたシャンソンの上原英里軍団も
お祝いにきてくれた。昨年の3月からライブを中止しているので、みんな久しぶりの邂逅。いつもだったら
お酒を酌み交わしながらの談論風発が、禁酒令がひかれた江戸ではご法度で、珈琲を飲みながら近況を語り合う。

その時、80歳になるカフェのママさんがやってきた。
近くのマンションで、カフェのようなことをやっておられる。店名もなし、メニューもなし、代金もなし・・
朝5時に起きて、ちゃんと築地で調達する鰹節と昆布で、みそ汁をつくる。
中身は、実家の福井の8歳年上の兄ちゃんが、引退後に始めた畑でとれた季節季節の野菜。
それを、マンションのワンフロアー下に住む95歳で認知症がすすむおばあちゃんのところに、
「ごはん、みそ汁、漬物、」の一汁一菜を折敷(おしき・お盆のこと)にのせもっていき、食べさせて、
食後に薬を飲ませて、また自分の家にもどる。すると、毎日3人から5人の近所のおばあちゃんたちが、
「モーニング(メニューではないので、そうゆうかどうか定かでないが・・)ください」よろしく、
朝ごはんを食べにくる。もちろん、タダ(ただし、使わなくなった珈琲マシンや器や、到来者を持参されるので
、ゆるやかな「原始的ぶつぶつ交換」は成り立っている。らしい。)

これから先の日本はどこでも、「最後はおひとりさま」という生活スタイル
になるので、みんなが「奉仕精神に満ちたばあちゃん(じいちゃん)」になっていけば、まだまだ日本も
大丈夫だ、という気がする。

朝ごはんが終わると、洗いもの台所に置き、くだんの95歳のおばあちゃんを誘って散歩。
大島まで歩くか、浅草方面、押上界隈の3コースを、体調と天気にあわせて調整しながら、
歩くらしい。一番お気にいりは、横十間川の川端を歩いて亀戸経由、大島・・・
この道はぼくもこの界隈では一番好きな道で、自分では「哲学の道」と勝手に呼んでいる。

散歩が終わり、朝ごはんの片づけが終わると、洗濯したり、買い物にいったり、荻窪や
築地のカフェにいったりして、自分の時間を楽しむ。週に二三度は、天真庵で蕎麦を手繰り、
珈琲とチーズケーキで〆る。糖尿病が少しすすんできたので、チーズケーキを食べるのは、
週一のペース。少し悩んで「私にストレスがたまったら、まわりのおばあちゃんたちが困るので、
ここでストレス解消したいので、今日はチズケーキもね」といって、ニコリと笑う。

ときどき、「参加型カフェの日」があるらしい。先週はその日で、筆子さんの携帯におばあちゃん
からラインがきて「かき揚げをいっぱいつくったので、とりにこない」というお誘いの言葉に甘えて、
はじめて「秘密のカフェ」にいってきた。
エプロン姿のママの他に、もうひとり料理人?のおばあちゃんが台所で、得意の「やきそば」をつくっていた。
自分の家でもないのに、「ああ、よくきたね・・・そのへんに座って」と元気な挨拶に、足が一瞬竦んだらしい(笑)
材料は自分で用意する、がルールなのだが「紅ショウガないの?」と、ママに指図をしたり、いつもは認知症でボーと
しているばあちゃんが、ママになって奮闘する姿は、想像するだけで楽しい。(ママは毎日こんな具合で、大変なんて
いう言葉では足らないだろうけど・・)

ときには、体調をくずし、救急車で病院へいく人があれば、ママは救急車にのり、エクストラベッドで
寝る、こともある。お兄さんが自慢のトマト「越のルビー」をだすと「私は入れ歯なので、湯引きして~」
とか、「ごはんが柔らかい、硬い・・」「今日の珈琲は、苦いだの・・」
わがまま放題なご近所さんを、無償で面倒を見ておられる。

昨日は、自家製のコロッケと卵焼きをもってきてくれた。
筆子さんが「主人の好物で、ちょうど今日は誕生日なので、あとでお酒のつまみにぴったり」
と答えたら、ママがびっくりした顔で「今日はうちの主人の33回目の命日なので、彼の大好物なものをお供えしたの」
という。カウンターの英里さんが、「つまり、その、ご主人の生まれ変わり。。。!」・・・
生まれかわる前に、とっくに生をうけているけど、不思議な「えにし」を感じた一日だった。
続けて英里さんが「自分が老いて、いろいろ手際が悪くなったり、失敗したりする話を聞いてくれるカフェ。
天真庵は、やっぱり東京に残しておいてね。」と誕生日プレゼントのようなお言葉を頂戴した。

今日4時まで営業して、Tくんに焙煎を教え、もうすぐママになるひとに蕎麦打ちを伝授したら、
能登へ出発。今回は少しながく、17日(金)まで、能登で野良仕事なり。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です