水木・・・と久しぶりに何もない休みだった。
不要不急の外出はやめてください、とオームが覚えた
ての言葉を連呼するように、厚手の化粧したばあさんがいうけれど、
こちとらも生きた身、休みの日くらい、外の空気を吸おうと、
水筒に「水素茶」をキンキンに冷やして、錦糸公園を目指す。
オリナスの前に「すみだ珈琲」がある。ここの店主は、お味噌つくり
に毎年こられる。食や水や、もちろん珈琲豆にもこだわりをもっている。
能登で汲んできた「霊水」をおすそわけすると、ニッコリ笑って
「体無理しないでください」とのこと。自分の親のように労(いた)わって
くれる。
次に向かったのが、「パルコ」。池袋時代にも、駅前にあったけど、
一度も入ることはなかった。生まれてはじめて「パルコデビュー」。
別におかまのMくんと待ち合わせたわけでもなく、目的は映画館。
今話題の「竜とそばかすの姫」を見るため。
映画館の定番「ポップコーンとコカコーラ」は、どうも苦手なので、
一階のフードコートの「なんやら」いうお店で、スタンダードなハンバーグ
とオレンジジュースを注文して腹ごしらえ。2000円弱。大手飲食店も続々と
「ハンバーグ市場」に参入を表明している。よくわからないけど、
それが「今の時代」なんやろ・・・隣には、「すみだ珈琲」の二号店。
すみだのおねえさんたちが、アイスコーヒーやソフトクリームを
食べながら、都会のオアシスみたいにくつろいでいる。
「竜とそばかすの姫」というのは、主演と歌を中村佳穂さんが演じていて大ブレイク中。
夏休み中とあって、人数制限されているけど、子供連れのお母さん中心に、にぎわっている。
中村さんは京都精華大学出身。ぼくの京都の下宿は、松ヶ崎というすこし辺鄙なところ
のうらぶれや一軒家からスタートした。昔から「うらぶれた一軒家に住む」というのが
好きだった?ときどき、チャリンコにのって、京都精華大学(その当時は短大だった?)
近くの喫茶店に珈琲を飲みにいった。出町柳から鞍馬あたりまでいく電車がよく見える席が
あって、そこでボーとしながら珈琲を飲むのが好きだった。まだそのお店があるのかどうか、
佳穂さんがうちのお店にこられた時は聞いてみたかった。
というのは、彼女はよくお店の前を散歩していた?
この通りにある「O・・・」という、ぼくのそばのお弟子様がやっている服のアトリエにちょくちょく
きていた。Oから「明日佳穂さんが打ち合わせにくるんですが、やってますか?」ときかれる
たびに、能登へ旅してたり、仕込みをしている日だったりで、チラ見しかできへんかった。
Oも、彼女のご贔屓だけでなく、ちゃくちゃくと力をつけ、全国区になり、寝る暇もないくらいに
忙しくなってきた。先日は、珈琲豆を買いにきて「突然ですが、
世田谷に庭付きの一軒家があったので、契約して、明日引っ越します」と挨拶にきた。
というわけで、Oがこの街からいなくなった。寂しくなるけど、エールをおくりたい。
「竜とそばかすの姫」の佳穂さんの歌は圧倒される。ぜひ映画館で観てほしい。
映画館をでて、錦糸公園を歩いていたら、鳩や雀の声がして、突然
三好達治の「裾野」がおりてきた。「ひとつごと」に生きるものはみな輝いている。
その生涯をもて 小鳥らは
一つの歌をうたひ暮らす
単調に 美しく
疑うなかれ 黙すなかれ
ひと日とて 与えられたこの命を