能登は雨が似合う

初日に「蕎麦会」をやり、いちにちおいて「梅仕事&田植え」ときたので、
まだ一回も買い物をしていない。温泉にいった日は、「田植えを手伝ってくれたお礼」
といって、晩御飯(ビールと竹葉つき)と温泉までご馳走になったので、まだぼくは
お金を一円も使っていない。一番近いお店は、歩いて20分のところにある「総合デパート」
みたいな中根酒店(天真庵のHPの金沢テレビで紹介された映像にでてくる)にも、まだいっていない。

そんな中、遠方より友がやってきた。小さな会社を営む女社長。基本的に、梅林ガールズみたいに
能登でいっしょに仕事をする場合は、宿泊もOK牧場だが、そのほかは「来るのは勝手、でももてなしが
できないので、宿はどこかとってね」ということにしている。電車の駅まで車で一時間。バス停は
あるけど、一日2便(便って飛行機?)。だから、車で近くの棚田のビュースポットをナビにいれて
きてもらう、を、原則にしている。

お昼くらいにその女社長が、金沢駅で調達したレンタカーで棚田までやってきた。
朝にタコを一尾ゲットしたので、それを土鍋でお米、タコ、酒に「かえし」を少し入れて、
「タコ飯」をつくった。東京から「糠床」をもってきるので、その中から、お弟子さまが千葉の畑
でつくったデカマラ胡瓜の残りが古漬けになっていたので、それを切り、香のものに・・
あとは、畑で朝とった胡瓜を、ソウフトバンク時代の後輩(正確には、後輩の奥様)がくれた高級?マヨネーズとシーチキン
をまぜたもの・・・一汁一菜にもみたない粗食をだした。

タコは、糠や塩でよくもんで、お湯に入れて「ゆでたこ」にする。それを刺身にしたり、
カルパッチョにしたり、タコヤキやタコガレットなどにするのが普通。
でも、ゆでたこにする前の生を、土鍋で炊くと、香りがたって、タコの旨味が一オクターブ違う
ものができる。

台所をのぞく女社長が「え、カセットコンロで料理してるの~」と、背後霊が叫ぶような声を出す。
「おかしい?」と問うと、「こんな豪邸に住んでいながら・・」のようなことをいうので、
「プロパンガスの契約をすると、毎月使わなくても、基本料金をとられる。それを払うお金があれば、
カセットコンロを一ダース以上買えるでしょ。10日いて、使うガスはせいぜい2本やで」と答えた。
台所の横にある風呂を覗いて「素敵な風呂ね」というので、「給湯器を入れてないので、まだ使ったことがない」
というと、「えええ・・なんで~」とまた雄たけびのような声をだすので、「日本海側には、いくつもの原発があるでしょ。
せめて、電気をなるべく使いたくないので、給湯器は、「薪」にするか、太陽光を使ってやるか、模索してんの」
と答えた。珈琲を淹れるために、そのお風呂場に置いてある「水のタンク」から薬缶に水をいれていると、
「水道も契約してないの?」と、まるで「こんな秘境に日本人が住んでいます」みたいなテレビ番組よろしく、
素っ頓狂な質問をする。「近くの酒蔵の仕込み水をくんでくるのです。能登の水は、少し硬水が含まれていて、珈琲によくあうの」と答えた。

能登くらしも3年になり、旅人みたいな感慨がなくなり、「なるべくお金を使わない生活」
も日常茶飯になってきた。先々月泊まった「湖月館」の女将に電話して、「取引先の女社長の一泊宿に・・」
とお願いして、そこへ向かう車をおくった。
「人間は情緒が大切」と世界的な数学者の岡潔先生がいった。
マヨネーズをくれた後輩から先日「岡潔にはまっています」とのメール。その後輩は、その後ソフトバンクモバイル
の社長までやった。夫婦そろって能登が気にいって、ときどき遊びにくる。

昨日ラジオで「女性の自殺者が増えていて、先月は1700件」とあった。岡潔先生が、1960年あたりに著した「紫の火花」という本がある。
その中に

「・・キーパンチャーには普通若い女性がなるが、よく自殺をする。キーをたたくことがなぜ自殺したくなる原因になるのだろう。
まったく不思議である。しかも、この問題は非常に重要である。なぜなら近ごろの教育はだんだんキーをたたく
ことに似てきているし、社会人の生活もそうであるから・・(略)

まだスマホもPCもない半世紀前に、こんなことを哲した数学者がいた。

生涯「正法眼蔵」を読まれていた先生は、

「生存競争とは『無明』でしかない」ともいった。けだし名言である。

17日の「大石学ライブ」は、中止にいたします。悪しからず・・・