ウッドショック

天真庵のカウンターは、この近くで半世紀以上居酒屋をやっていた居酒屋
さんから譲り受けたカウンター。ある時、その居酒屋の常連さんに
「百尺(その居酒屋の名前)の主人は、夏目漱石が好きで、草枕をよく読んでいた」
という話を聞き、煎茶を学ぶものは必ず読む本を読み直したら、
「情に棹させば流される・・・」の有名な序文の後に、「何百尺の檜に囲まれていても・・」
という文章を見つけ、そのお店の名前の由来と、カウンターの木が、檜であることがわかった。

毎週のように、近所の木材所の3代目が「そばやの昼酒」をやりにくる。初代は、テレビが普及し始めた
昭和の30年代、とりわけ爆発的に売れた東京オリンピックの時に、テレビの足を大手電機メーカーに
収めていて、財をなした。東京オリンピックといえば、マラソンで優勝したアベベの裸足の足が、記憶に新しいが、
その裏で、「足」で稼いだ人たちがいたのだ。風が吹いたら桶屋が儲かる、という経済学にどこか似ている。

その三代目が、禁酒法化の東京のそばやで「そばピザとアイス珈琲」で「そばやの昼酒もどき」をやっていた先々週の日曜日に、
ポツリと「木場の倉庫が、木材の在庫がなくて、ガラッガラ」だといった。
コロナ禍で、リモートがすすみ、アメリカでは郊外に家を建てるのがブームになっているそうだ。
日本は7割が森林に囲まれているのに、安い木材を輸入することに慣れてしまって、国産は5割程度で、どこの山も
荒れ放題で林業が成り立たなくなって久しい。

これから、コロナが一息ついたら(オリンピックを強行したら、どうなるかわからんけど)、日本も
都心から郊外へ人がシフトしていくと思う。幸いなことに、田舎にある「空き家」は、外来でない、国産の材木を
つかった伝統的な工法でたてた家が、まだたくさん残っているので、修理に少しお金がかかるけど、自分でできる
ことをやっていけば、なんとかなるし、空気がきれいで、自然豊かな土地で暮らす、という第二の人生に
チャレンジするチャンスでもある。

昨日は蕎麦打ちだった。熊本の築150年の家を改修中のTが、まじめに習いにやってきた。
早稲田大学時代に、有名な蕎麦屋でアルバイトしていただけあって、覚えがはやい。
今週でぼうテレビ局を定年退職し、Uターンして熊本で「そばや」で〆る。
この秋に、熊本で2軒のそばやができる。草枕の舞台になった「那古井温泉」というのも熊本だ。
九州が恋しくなったら、そこにいって、球磨焼酎
のそば湯割りを、そば前にして、談論を風発したいものだ。感謝。

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