そば前禁止令

そばやで、卵焼きとか、いたわさ、とか、そば味噌とかをつまみながら酒を
飲む。〆のそばがくるまでの至福の酒時間を「そば前」という。
江戸の鮨を「江戸前」といったり、北の日本海を渡る舟を「北前船」といった
のと同じニュアンスで、その時代の粋みたいなものを感じる。

今日からその「そば前」も、居酒屋もカフェバーも「酒」がご法度になる。
春うららで黙っていても酒がほしくなる季節なのに、とくに左党にとっては、
刑務所にでも入った気分ではなかろうかしらん。
左党。大工は左手に「鑿(のみ)」を持ち、右手に金槌をもつ。左の「のみ」と
「飲み」をかけた。電動ノコが当たり前になった昨今では、死語に近いかもなんばん。

というわけで、昨日は「おわかれ会」のように、「昼酒組」の人たちが三密をさけてひとりでぽつりぽつり
やってきて、そば前の独酌を楽しむ姿が印象的だった。
4時からは二組の「そばもん」が蕎麦打ちに熱中してる最中でも、「かけこみ」で入ってきた
みかんくん(日本酒の卸問屋で働いている)とも、パリのワインの大会で日本酒部門で金賞を
とった「奥能登(竹葉の酒蔵)」を「ささ・・」とかいって、酌み交わしながら一献。
おさらい・・大酒飲みのことを「大寅」という。座敷遊びでも♪トラ トラ  オオートラ
なんていく古典的な遊びがある。
酒飲みが自分が飲みたいがために、「ささ、一献」とかいって、相手にすすめる「笹(ささ)」
からきている。昔から日本画に寅が描かれている構図は、竹林を借景にしている。
もっとも、パリで賞をとった「奥能登」も現代風に、ワイングラスで飲むとうまい、そんな酒だ。
ワイングラスで酒を飲むようになると、「ささ」という風物詩もへったくりもない。

そんなタイミングで、甥っ子の航太が珈琲を飲みにきた。
一年間の巣ごもり生活で、料理と珈琲の腕をあげたらしい。
昨日きたばかりの「輪花ドリッパー」を「おいちゃん(ぼくのことをそう呼ぶ)、これ久保さんやね。
買っていく」とのこと。さすがにDNAを共有している気分になる。
来週は、おいちゃんの蕎麦打ち教室に入門。くまもん、博多もん・・・九州人にそばが流行っている?感謝。

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