能登ごはん

よくお客さまに「天ぷらはやらないのですか?」と聞かれる。
昔から天ぷらは、人にあげてもらったほうが美味いので、お店でもまかないでも
天ぷらはやらない。ときどき、出張の蕎麦会をやったりするとき、その地の人が
つくってくれたりすると、そばよりも、そちらの方に自然と箸が伸びる。
昨年の夏に、長崎の雲仙でやった時、福田屋という老舗旅館の料理長さんたちが
天ぷらをあげてくれた。筆舌が及ばぬ幸福感に満たされ、彼らと飲んだことがアンフォゲッタブル長崎、
として脳裏に焼き付いている。

昨日、近所のおばあちゃんが「食べて」と、タラの芽、こしあぶら、を笊にいれてもってきてくれた。
これは、天ぷらが一番なので、米粉を溶いて衣にし、さっそく天ぷらにした。久保さんの伊賀の大皿に
のせ、能登ワインで夕食。一本がまたたく間に空き、囲炉裏の上に置いた鉄瓶に、角居くん作の錫のチロリを入れ、
「亀泉」を熱めの燗酒にして飲む。中村伸郎さんの「永くもがなの酒びたり」を読みながら飲んでいたら、
日ずけ変更線を超えた。朝6時の目覚まし(災害用の有線で、季節ごとに違う音楽が鳴る)で、一度
目が覚めたけど、春眠暁をおぼえず、で寝坊してしまった。

今日は「燃えるごみ」の日なので、海が見えるごみの収集場所にもっていったら、目の前の
海に伝馬船がいっぱい。春の風物詩、わかめをとっている。
それぞれの家庭に、大きな竹の笊があって、あがったわかめを、そこで天日で干して、みそ汁のみ、
端っこは小さくして、ふりかけにする。
先日、土産のそばのお返しに、はちめ、いとより、かさご・・これ食べる?といわれ、そのわかめの
ふりかけをいただいた。朝ごはんの時、持参の「八郷の暮らしの実験室の平飼い卵」で卵かけごはん
をつくり、そこに、その「能登ふりかけ」をぱらりとかけて食べてみた。
数々の「ご当地ごはん」があるけど、これは「能登一の朝ごはん」だ。