銀座で稲作り

昨年、押上から銀座に「隕石直売所」なるお店を引っ越した王子
から、はやめのお歳暮が届いた。「空也モナカ」。120年の老舗で、
夏目漱石の小説にも登場する。
自粛もとけ、久しぶりに銀ブラをするか、と、お返しに久保さんの
織部の六角盃をポケットにいれて一ケ月ぶりに電車にのって、東銀座で
降りる。まだ閉まっているけど、歌舞伎座の出口から、テクテク歩いていく。

先週まではゴーストタウンみたいだった町に、人が半分ほどだけどもどってきた、かんじ。
ときどき女将が蕎麦を手繰りにくる「銀の塔」も少しお客さんがもどってきた。
歌舞伎座が始まれば、役者やファンでまたにぎわいをとりもどせればいい、なんて
思いながら、「隕石直売所」へ。王子が一階の通路においた花に如雨露で水をあげている。
なんやらコロコロと音がする。隕石が中に入っているのだ。天真庵のお店の前の
木賊(とくさ)やツワブキやしゃがたちも、同じように如雨露に「うめ星」を入れて
かけてあげる。月に10日くらい留守にするけど、すこぶる元気だ。

「これ稲です」と王子。「銀座で稲・・?」というと、「鎌倉に家を見つけ、
敷地も広いので、農業をやろうと思って・・」とのこと。
銀座に店をかまえ、近くのマンションで暮らしていたけど、このシンコロ時代の
新しいスタイルを考え、「終末は鎌倉で農業」というデュアルライフにシフトするらしい。
テレワークが浸透し、第二波がきたりしたら「東京にいる必要がないんじゃない?」
から「東京から離れて生活する」というような流れは加速するに違いない。

お店はまだ自粛中で、ネット販売中心だけど、さすがに「銀座の新しい老舗?」
四方山話をしてる最中でも、電話がなり、注文に対応している。大きな声では
いえないけど、うちにも少なくない発注をいただいた。
「骨董屋めぐり、いっしょにいってもいいですか?」というので、その後、ふたりで銀ブラ
・・・ショッピングモールの中に入っているようなお店は、モールそのものがまだ自粛中なので、
「銀座骨董めぐり・初心者コース」は、「また次回ね」ということにあいなった。

そのまま有楽町で山手線にのり、秋葉乗り換えで錦糸町で降り、ブックオフで
本を探していたら、おかまのMくんからメール。
「猿田彦の掛け軸を買ったら、なかなかいいので、15万で買ってくれない~」
とのこと。「20分後にもどるので、見せて」
と返し、しばらくして、チャリンコにのったMがやってきた。
カウンターの上に鎮座する三番叟(さんばそう)の猿の置物も、Mくんが
ネットで注文して買ったものだ。最近はそれに「隕石入りの勾玉」をかけ、手には
宗像大社の稲穂のお守りを持たしてある。不思議な「お猿さんの神棚?」
そこにまた「猿田彦の掛け軸」・・・そのうち猿回しでも連れてきそうな勢い。

火曜日の閉店間際、「梅林ガールズ」のMちゃん(この人はおかまではない。)が、
一か月ぶりにきて「そばがきぜんざい」を食べた。すると煎茶仲間のMさん(洗い張り屋の女将)
がきて「一杯つきあって」ということになり、3月にインドにいった話などを聞きながら談論風発。
世間ではオンライン飲み会なるものが流行っているらしいが、やっぱり酒は、徳利持つ手が届く
距離がいい。

酒飲みを左党(さとう)という。大工は鑿(のみ)を左手、トンカチを右手に持って仕事をする。
鑿と「飲み」をかけて、そうゆう風にいわれるようになった。徳利も「徳ある人が利かせる」
つまり、お金がなくても「おごるよ」と声をかけられるような徳ある人は、上手なタイミングで徳利の
首をもって、「どうぞ」と注げる人。つまりは「気が利く」という人が好かれる、ということでもある。

どうせオンラインでやるなら、キャバクラ店の人たちが苦肉の策ではじめた「チャットレディー」たちがやっているライブチャット
のほうが格段おもしろそうだ。感謝。