能登半島の西の中央にある「志賀町」(しかまち)は、「ころ柿」という干し柿の産地である。
11月の里山には、葉っぱが落ちた柿がたわわになっている。少し空気がひんやりとするこの時期
に、最勝柿(さいしょうがき)でつくる「ころ柿」は、もともとは煎茶のお茶うけのルーツであり、今は
ふるさと納税の目玉でもある。散歩していても、干し柿専門の納屋につるす柿の姿は、まさに能登の秋の風物詩。
昨日の朝、「隣に越してきた客は柿食う客じゃろか」よろしく、「渋柿だけど、干し柿にするんやったら
とっていいよ」というので、一時間ばかり柿とりをした。大きな袋3つが満杯になった。今週東京にもどったら
「干し柿つくり」で一日はつぶれそうだ。里山に自生している柿の木に、ぽつんとひとつだけ残された姿は、
去り行く秋の風情があっていい。鳥たちが、「来年もよろしく」と残していったやさしさの証。
夕方は、輪島の小料理屋のご夫婦が遊びにこられた。京都で修行された彼の料理は、季節季節の素材の
味を上手に料理する達人。玄関の久保さんの備前の花器に、柿の木と昭和枯れすすきを投げ入れ、正面に紫式部を飾り
おむかえした。利休は「花は野にあるように」といった。花はこの教えがすべて。裏の畑につながる里山に、
季節季節の茶花が咲いている。茶花は8割が薬草でもある。病院の数や規模は東京にはかなわいが、自然の薬や
自然治癒力のある風景などは、比べようもない。
お茶をいれる。もちろん、ふくさも扇子も使わない。煎茶の基本「茶櫃点前」の応用で、煎茶も玉露も珈琲も入れる。
お茶を楽しむの中で「点前」というのは10%も満たない。気のおけない仲間が集まり、暖かいこころを持ち寄り、
「Here Now いまここ」という刹那をともに楽しむ。それだけだ。花をいければ、ご馳走だ。軸を掛ければご馳走だ。
それよりなにより、「居 いまここ」にある縁に感謝する。花も生かされ、わたくしたちも生かされ、同じ場所にある。
それがすべて。「美田は残さない。名前も残さない」 名利と人間らしさは、背反するもんだ。
働くときは一生懸命働き、遊ぶ時は命がけで遊ぶ、がいい。
テレビ金沢の映像をHPにアップした。能登の家から一番近い「酒屋」に毎朝のように25分くらいかけて歩く。
右に寄せては返す冬の日本海のうごめきを聞き、左手には収穫が終わった棚田とその先の里山の秋・・・
ぼくのポケットには「安重」(京都の華道の流派のご用達)が入っていて、畦道や川端に咲く茶花たちと話を
しながら、「うちにくる?」とかいいながら、花を生かすことを考えながら歩く。ごみを捨てるのにも「軽トラ」
の過疎地に、花とりじいさん、よろしく徘徊する姿は奇人にうつるらしく、軽トラがとまって「今きとるんね」
とか「テレビみたよ」とか「東京にはいつかえるん?」とかいう会話が日常茶飯になった。おかげで、昼間は立小便
の楽しみができなくなった(笑)自然の中で人間らしく生きる。過疎が増える日本の中は、どこも桃源郷かもなんばん。感謝。
長屋Live (2019年12月スケジュール)
7日(土) 仲内拓磨ギターライブ
演奏:仲内拓磨(ギター)
19時開場 19時半開演 ¥3,500(お酒・肴・蕎麦・珈琲 付き)
21日(土) 国貞 雅子 ソロ LIVE
演奏:国貞 雅子(歌・ピアノ)
19時開場 19時半開演 ¥4,000(お酒・肴・蕎麦・珈琲 付き)
28日(土) 堀 まゆみ&大石 学 ジャズLIVE
演奏:堀 まゆみ(ヴォーカル)・大石 学(ピアノ)
19時開場 19時半開演 ¥5,000(お酒・肴・蕎麦・珈琲 付き