「遊び」の中に文化がある。
先月津軽三味線の竹勇さんが、ライブをやってくれた。
高橋竹山さんの流れの人だ。最初に三味線を習ったのが、大塚の芸者さん。
その人の三味線を運よく、一度お座敷で聴いたことがある。
ぼくが代表をしていたIT業界の組合の事務所も、最後は大塚の花街の一階の事務所だった。
今も月に一度、板橋の歯医者にいった帰りに、界隈を散歩すると「NET21」という青いテントが
張ったまんまだ。次に入居した婦人団体の代表が、「テントはそのままにしといてください」というので
そのまんまにしている。知り合いのテント屋がまじめにつくったもので、風雪に耐えて20年近く
もったままだ。歌舞伎の玉三郎さんの実家のすぐ隣のマンションの一階にある。その当時は料亭もあって
三味の音が聞こえていた。「なべや」という江戸料理の名店もあった。
大塚駅をでると、すぐに都電の線路があり、そこを超え、「ひょうたん島」というパチンコ屋
の路地を入っていくと、その花街がある。「三業地」という(こないだまで三業地入り口という看板があった)。
三業というのは、座敷がある旅館、置屋(芸者がいるプロダクションみたいなもんやね)、料理屋の三業。
お客さんが、お店にいき、「いついつ何人の宴会をやりたい」というと、女将が置屋に電話をして、
芸者さんの手配をし、料理屋に料理を頼む。つまり「三つの分業」が自然に成り立っていた。
地方から女の人が、花街に縁づいてくる。器量のいい子は、芸者の修行をする。器量が悪いが、
起点が利く子は、料亭の掃除や雑用をし、才覚のある子は料亭を継いだり、新しくもったり、
料理屋やおにぎりやなどを開いたりして「たつき」をやりくりしていた。
昔は、大臣や社長あたりが芸者と結婚する、なんてよくあった。落とし種が、その町に残り、
成長して役者などになるケースもままあった。そんな時も、街のおんなたちがチケットを売ったりして
応援する。「命あるものはみな女陰から生まれ、母なるこの地球(ガイヤ)という星で生き暮らす」。
そんな「天地自然の理」の縮図みたいものが花街にはあった。今は昔だ。
地方の温泉街にいっても、昔は居酒屋があったり、ストリップ小屋があったり、もっと妖しいとこがあったり、
浴衣を着てブラブラするのが楽しかった。でも今は「ねこそぎ主義」で、近代化した旅館の中で、飲食から買い物
まですますようになった。分業ができてへん。地方の街に「なんやらモール」とかいうのができると、地元の商店街
はたちまちシャッター街になる。商店主たちが通う居酒屋や花街の灯が消えるのは、自明の理だ。共存の気持ちがない。
そんなことが、あらゆる業界にいきわたり、奴隷のように人生の大半を「会社」に費やしても、老後は
2000万くらい足らない計算だと、自腹をきらずに、私腹を肥やす官僚や政治家たちがのたまう。
三味線どころか、無芸大食のサラリーマンたちは、「身を助ける芸」がないので、会社を離れると不安で不安でしょうがない。
今は、たぶん、大半の人たちがそんな毎日をおくっているのだと思う。
なんとかせんとしばらくは、「一億総うつ」な状態のまんまだろう。
まずおひとりおひとりが「私の人生を楽しくしよう」と決めて、行動に移すことからや。
自分が楽しくないと、笑えないし、その幸せ感を人に伝えられへん。自分の中の「元気」の気
が満ちてこそ、その気を人に広げていくことはできんよね、きっと。でもこれからは、
そんな元気を広げていく人が活躍する時代やと思う。
昨日と同じ今日はない、そんな道を選ぶ。
降りる駅を変える。歩く道を変える。いく店を変える。いく会社をかえる。
住む場所をかえる。パートナーを変える・・・なんでもいいから「変化」させてみるのも一考や。
宇宙も無限に進化発展する。私たちもその一員であるので、同じように進化していくのが自然かも。
もう少しすると、「住む国」をなかば強制的にせまられたり、「住む星」を変えないといけない時代がきそうな
くらい、世の中が変わってきそうな予感。しかし、どんな状態になっても、「今」という時に生きているし、
「居」というその場で、生かされていくのだろう。「人生いたるところに青山あり」だ。
たとえ、何光年と離れ離れになっていても、魂のレベルで「つながり」をもてるはずだ。
今日は「お座敷芸」の神髄がいっぱいつまったソボブギのライブがある。
先月ライブをやってくれたウクレレのバロンさんが「彼らの芸は日本の宝ですね」といった。けだし名言。
これから生きるヒントがいっぱいある。うじうじしている気分を開放させるのは、「お座敷遊び」みたい
なもんがいい。酒もますますうまい。「一斗二升五合」(これが読める人もいなくなった)
「なべや」の厠には、こんな詩が短冊に飾ってあった。
急ぐとも 心静かに 手を添えて 外にこぼすな 松茸の露
11/6(水)新作CD発売記念ライブ「ソボブキ」
演奏:
西尾賢(ピアノ、三味線など)
藤ノ木みか(うた、パーカッション)
伊藤啓太(コントラバス)
豆奴 (おまけ)
19時開場 19時半開演 ¥4,000(お酒・肴・蕎麦・珈琲 付き)