山桜桃

「ゆすら」という。
笠間に須藤本家という日本で一番古い酒蔵があり、そこのお酒の名前。
ワードで「ゆすら」といれると山桜桃がでる。「どうだん」といれると「満天星」がでる。
人工知能も進化していく。「もすら」といれたら「ザ ピイーナッツ」になるのも時間の問題?

ときどき、蕎麦を手繰りにくる社長がいる。京都でお茶会をやった時にも
きてくれたり、二階で定期的に「普茶料理の会」にきてくれたりする紳士。

彼が「山桜桃」を休みの日に二本もってブラリとやってこられた。
お父様が、最近91歳で大往生されたとのこと。「一本をどうぞお飲みください。
もう一本は、ここであけてご一緒に飲んでください」というので、お流れをちょうだいいたします、
という感じで「献杯」をする。久保さんの瀬戸黒のぐいのみで飲んだ。
聞かずとも、「わが人生に悔いはない」人の一生が感じられる。

「施設にいたおやじが、誤嚥で息をひきとった、という知らせを聞いて、「それは、係の人を傷つける
ようなことになった」と心配していたら、医者から後で、その前に動脈瘤が破裂してました、との説明を受け、
「さすがおやじ、よくやった」と思い安心立命の境地で見送くることができました」
と微笑んで一献。ささくれだったような殺伐とした話が多い昨今、さすがだな、という感じがした。
お返しに「これでお父さんとまた飲んでください」と、瀬戸黒をお渡しした。

お酒もお茶も、人と人を紡いでいくものだなあ、と痛感しながら痛飲。年をとればとるほど、どちらも味わい深く
なり、美味くなっていく。これもまた人生。

ここの酒蔵は「木を切るな・・・・」が代々語りつがれ、「酒、米、土、水、木」が家訓だそうだ。
自然を愛し、循環していく自然や、四季のうつろいを大切にしながら酒つくりに精進されている姿を彷彿
させる言葉だ。かくありたいものだ。

昨日で「梅仕事」が終わった。45人くらいの人が参加された。
93歳になる父親から電話があった。「梅干し、梅シロップがうまい。ありがとう。」とのこと。
こちらも「わが人生に悔いはない」を貫き通した大正生まれの大将。
この季節に「梅シロップ」や「梅干し」をいただく「わけ」が、この国の四季のいつろい、という天の恵みの中にある。感謝。