白玉の歯にしみとおる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり

少し暑くなりそうな気配だけど、秋晴れのいい天気。
酒の美味い季節。「こんなにすがすがしい一日って、年に何日あるんだろう」
なんて感じられる日は、おいしい酒が飲みたくなり、牧水のこの詩を思い出す。
もっともなんやかんや理由をつけて、365日酒を飲んでいるけれど・・

日曜日は開店してすぐに満席になり、1時には、ほぞ蕎麦が売り切れた。
そんな中にハプニングができた。家族4人でよく蕎麦を手繰りにくる常連さんがいる。
長女ゆうなちゃんはぼくとどらえもんと誕生日が同じで、親近感もあり、蕎麦豆腐が
大好きで、小さい(今は4歳)ときにはぼくのことを「豆腐屋のおじさん」と呼んでいた。
今はやっと「えーちゃん」と呼んでくれる。妹のかんなちゃんも蕎麦豆腐が大好きだ。

蕎麦豆腐には、ちょこっと上に柚子胡椒を載せていて、おかあさんがそれをよけながら
じょうずに食べさせている。その日は、ちょっとしたスキに、かんなちゃんが柚子胡椒の
かたまりを食べた。生まれて初めて「体験」する衝撃に、腹の底から「ギャー」と泣き叫んだ。
激辛のカレーの味を中和させるのは珈琲が一番。柚子胡椒を中和させるには?
と考えて、洗双糖の角砂糖をなめさせた。一瞬泣き止む、けど、その後はまた辛さが
よみがえってくるみたいでギャーとなった。
けっきょくおかあさんと近くに散歩にいって、上機嫌でもどってきた。

つぎに、口直し?ではないけど、またちょっとしたスキに、おかあさんのお膳の上のぐいのみの酒を
飲もうと口つける。両親ともに「左党」であるし、間違いなく酒飲みになるだろうけど、まだ18年
ほど待たなくてはいけない。しかたないので、手元にあるぐい吞みに水を入れてだしたら、
小さな親指と人差し指ではさんで、その真ん中あたりに口をつけ、「あ~っ」なんていいながら
おいしそうに飲んでいた。

今日は「ちんぷん漢文」の日。織田流煎茶道の先輩が先生。彼の母堂さまは、お花の先生だった。
毎週庭に咲く季節の花をお土産にくれる。今は「秋めい菊」と「紫式部」が咲いている。
水があがりにくい花を、前日からきちんと水あげして、丁寧に根に水を含んだキッチンペパーを結び、
千葉の自宅から運んでくれる。おかげで「花泥棒」と近所では悪名がつけられていたぼくの
犯罪数もだいぶ減った。(人んちの花は、取りませんよ。歩道や街路樹の脇に咲いてる花、川端の花・・・)
花は花屋で買うものではいけない。温室で栽培されたものには、野趣がないので、部屋の空気をパッとかえる力がない。
利休さんがいわれたように「花は野にあるように」が大事。

明日明後日は「珈琲塾」と「お茶塾」。明日くる青年は世界に煎茶を広げたい、との野心をもっている。
自分の生き方に「これだ」というぶれない「きめたこと」を持っている人は、強い。