京都三条の糸屋の娘

「京都三条の糸屋の娘、姉さん十八、妹十五、諸国大名は弓矢で殺す、糸屋の娘は目で殺す」
頼山陽がつくった詩で、中学校の国語の福田先生が教えてくれた。起承転結、を学ぶのに
一番わかりやすい文だ、とかいいながら、教えてくれた。なんだかよく覚えていて、京都で
学生生活をおくりながらも、ときどき思い出したけど、目で殺すような、こいさん、いとはんには
ついぞ出会うことはなかった。

昨日は、茶櫃と茶合・・・漆や茶道具などに酔いしれた。

百万遍という京大のあるところに、昔から進々堂という喫茶店がある。そこには、木の大きなテーブル
と椅子がおいてあって、独特な「京都時間」を堪能できる老舗。そのテーブルと椅子は、黒田辰秋氏の
若いころの作品だ。彼は塗師(ぬし・・・漆職人)の家に生まれが、ほんとうは絵描きになりたかったらしい。
18歳のころ、河原町の骨董屋の前を通った時、飾り窓に飾ってある河井寛次郎の香炉を見て、「ふわーと酔った」気分になり、
「よしぼくは木工やになろう」と人生を決めた、という話が好きだ。

こんな話もある。その黒田さんに志賀直哉が、机を頼んだ。忘れたころにできあがった机を見て、
「この机にあうように、この部屋を建て替えなくてはいけないな。部屋ができたら、部屋と机にあうように、
主人(あるじ)の首をすげ替えなくてはならないな」とのたまわれたらしい。粋な話だ。

夕方そばのお弟子様が、蕎麦打ちにきた。そのかみさんがカウンターで酒を飲みながら待つ。
先月、彼女が愛用の久保さんの志野のぐいのみを少し酩酊して落として割られた。それを金継ぎに
きた時、漆にかぶれ、しばらく禁酒していた。酒飲みも道具が大事である。命がけで金継ぎをし、
また金継ぎされた器で命がけで酒を飲む。

古い家を上手に改装して住む、ことを「住み継ぐ」という。金継ぎされたり、漆を塗りかえたりしながら、
人から人へ、道具が渡っていき、新しい物語を紡いでいく、のも素敵な旅だ。
まだまだ旅の途中ですが、いい旅だな、を感じる一日だった。

今日はこれから「卵かけごはん」二階では「満つまめの会」 夜は「福の会」
明日がタイムドメイン。
水曜日が「おんなかっぽれ」 日中は「満つまめの会」

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